判例タイムズ1414号で紹介された事例です(東京地裁平成26年10月3日判決)。



日本の旅行代理店が,マレーシアでのスキューバダイビングを行う旅行を企画し,これに応募した原告が,現地でのダイビング中に事故に遭ったとして,旅行を企画した旅行代理店に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償等を請求したという事案です。

なお,日本の旅行代理店は,マレーシアでの業者手配(ランドオペレーター)を行う別の日本法人に業務を委託したうえで,さらにその別法人がマレーシア法人に対してダイビング実施業務を委託しているという関係になっています。




原告側は,旅行代理店が負うべき安全配慮義務の一つとして,瑕疵のない旅行サービスを提供すべき義務があると主張しましたが,裁判所は,当該旅行約款には宿泊などのサービスの提供を受けることができるように手配し旅程を管理することが業務の内容として記載されているのであり,旅行代理店としてはサービス提供の準備を整える以上に,旅行代理店自身が安全なダイビングサービス等を提供すべき義務までは負っているとはいえないとしました。




また,原告側は,ダイビングサービスを提供する機関の選定に関し十分な調査・検討をすべき義務があると主張し,裁判所は,この点に関しては,旅行代理店との間の契約の付随義務として,原告の生命身体の安全等を確保するため,旅程の設定やサービス実施機関の選定に当たっては合理的な判断,措置を行う義務があるとしましたが,本件においては,現地で実際にダイビング等を実施したマレーシア現地法人はダイビング団体からの上級認定証を受けるなどしており,その安全性を疑わせるような事情はなかったとして,旅行代理店が当該マレーシア現地法人を選定したことは合理的であり,当該義務違反と認められないとしました。




なお,特別補償契約(旅行保険)に基づく請求については一部認容されています。




海外での事故をめぐって争われた事例としては,トルコ旅行中のバス事故に関する東京地裁平成25年4月22日判決,サイパン旅行中に発生した小型航空機の墜落事故に関する東京地裁平成22年12月24日判決,韓国旅行中のバス内での事故に関する大阪地裁平成20年9月30日判決などがありますが,いずれも,実施機関の選定に不合理な点がなかったとして,原告(旅行者)側の敗訴となっているようです。




本件は控訴されているということです。






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