判例タイムズ1410号で紹介された事例です(東京高裁平成25年7月3日決定)。




相続が発生したものの相続人がいない場合には(正確には、相続人がいるかどうか不明のとき)、利害関係人などの申立てにより家裁が相続財産管理人を選任し、相続財産管理人が、相続人の捜索の公告を行い、それでも相続人や受遺者が見つからない場合には、相続人の不存在が確定します。




相続財産は国庫に帰属することになりますが、その前に、特別縁故者による財産分与の申立てという手続があり、特別に寄与した者(特別縁故者)に対しては家裁が財産の分与を許可することがあります。




本件では、Aの相続発生後、相続財産管理人が選任され、相続人の不存在が確定し、Bが特別縁故者の申立てをしたものの、その家裁の判断がされる前にBも死亡してしまい、Bも相続人の存在が明らかでなかったため相続財産管理人が選任されたという事案です。




原審では、Bの死亡により、Bが申し立てていたAの相続財産に対する特別縁故者による財産分与の申立ては終了したと判断されましたが、Bの相続財産管理人が抗告したところ、Bの死亡によってもBが申し立てていた特別縁故者による財産分与の申立て手続きは終了しないと判断されました。




Bにも相続人がいないのであればどのみち国庫に入るのだし、どっちでもいいじゃんという感じもしますが、Bに対する債権者がいたような場合には弁済の有無や金額が変わってくるということもあり、一応筋道立てて検討しておくべき問題なのです。




相続の分野自体が必ずしも通説判例が確定していることが多いわけではなく、また、相続人がいない場合の処理の問題なると、さらに特殊な分野なので未解明の論点も多いと言えますが、今後、高齢化社会により相続人がいないまま発生する相続という問題も増加するであろうことを考えると、立法その他でもっと手当てしておくべきことも必要なのではないかと考える次第です。





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