判例時報2247号で紹介された事例です(東京地裁平成26年11月17日判決)。




このブログでも既に何件か紹介しているところですが、本件も司法書士による本人確認について注意義務違反(過失)があったとして、司法書士に対する損害賠償が命じられたという事案です。




本件の原告は、不動産の売買や仲介などを行う会社で、その年の12月上旬に、原告の取締役が知り合いの会社の役員から当該不動産の購入を紹介され、同年12月21日には代金3500万円で購入することを決めましたが(なお、固定資産税価格では約4410万円)、契約決済までの間に、自称売主から本人確認や権利を裏付ける資料(権利証など)の提示、写しの提出を受けるということはありませんでした。




不動産の契約決済は12月26日にとされ、その前日に、本件司法書士による自称売主の本人確認が行われましたが、権利証は紛失したという申し立てを受けて、司法書士は、運転免許証や印鑑証明書の提示を受けたものの、インクがにじんでいたり印字がずれていたりというしろものでした。しかし、司法書士はこの点を追求することはなく、免許証の顔写真と自称売主理との確認や生年月日等の質問をしただけでOKとし、買主側に対して注意喚起をすることもありませんでした。その場に立ち会った買主側の関係者も、免許証党は確認した者の、前記の点について追及することはありませんでした。



その翌日に契約決済が行われ代金も支払われましたが、司法書士から書類の提出を受けた法務局から待ったがかかり、結局、免許証等は偽造であったことが分かり、申請は却下とされました。



本件では、前記の用な免許証や印鑑証明書の不自然な点について司法書士が見逃していた点(このような手口について平成21年に東京法務局から司法書士会に対して注意喚起がなされていた)などについて司法書士に過失ありとされました。




もっとも、買主の方も、本来的には自ら売主の本人確認を行わなければならないというのにそれを怠っていたことや売買を急いで準備を急かしたことや買主側の関係者も免許証等の不自然な点について見過ごしていた点などに過失があるとされ、7割の過失相殺がされています。



本件は確定しているということです。






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