判例時報2215号などで紹介された事例です(福岡地裁平成25年9月19日)。




本件では,タクシー運転手が駐停車していた時間について,労働時間となるのか休憩時間となるのかが争われました。

運転手側は,労働時間としてカウントすれば賃金が最低賃金を下回るため不足分の支払いを求め,会社側は,5分を超える駐停車は休憩時間であって労働時間にカウントしないので最低賃金を下回らないと主張しました。




会社側は,5分を超える駐停車をしないことを指導しており,これを超えた駐停車は休憩時間とみなすとしていたと主張しましたが,裁判所は,これだと,常に走行しながら客を取るという流しの営業しかできないことになり,このような営業方法はタクシーの実態に反しているとし,会社がこのような指導を行っていたとしても合理性がないものだとしました。




もっとも,裁判所も一般論としては,一定時間を超える駐停車を休憩時間とみなすということについて就業規則などで定めておくこと自体は有効であるとしています。

この点について,判例時報の解説でいくつかの裁判例が紹介されており,10分間空車で停車している場合には休憩時間と判断するシステムを搭載していたとしても客待ち営業中は労働から解放されているとはいえないとしてシステムに基づいた休憩時間を認めなかったもの(大阪地裁平成21年9月24日判決),15分以上の停車を休憩時間とみなすという協定を結んでいたとしても客待ちのための停車が15分以上になることは十分あり得るとしたもの(札幌地裁平成24年9月28日判決),客の降車や休憩時刻終了から次の乗客を乗せるまで30分以上の間隔があいていたとしても不自然ではないとしたもの(熊本地裁平成24年4月27日判決)が紹介されています。

すべて,運転手側の主張を認めたもので,本件でも5分を超える駐停車が休憩時間とするというのは客待ちのために駐停車しているタクシーはいくらでもあるという実態にかけ離れたあまりに不合理なものであり,会社側の主張は認められませんでした。





本件は確定しているということです。





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