判例時報2221号で紹介された事例です(最高裁平成26年3月25日決定)。
事案は連続強姦事件で,被告人がリゾートマンションで薬物を混入した料理を女性に食べさせて姦淫したり,未遂に終わったというもので,7件が起訴され,うち2件で勾留がされていたというものです。
審理の経過は,第4回目の公判期日が終わったところで,被告人はすべての事件の事実を認めたうえで,検察官請求証拠についてもすべて同意し,次回第5回公判期日では被告人質問と被害者の意見陳述,論告弁論を行うという予定の段階でした。
この段階で被告人から保釈請求がされたのに対し,審理を担当していた一審裁判所は,保釈金合計1500万円で被告人の保釈を認めたのに対し,検察官が保釈に反対して抗告したところ,高裁は,刑訴法89条1号(死刑・無期または短期1年以上の懲役禁錮に当たる罪を犯したとき),3号(常習として長期3年以上の懲役禁錮に当たる罪を犯したとき)に該当し,さらに,重要な情状事実について事故に有利に罪証を隠滅する恐れも否定できないから同条4号(罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由がある)にもあたるので権利保釈事由には該当しないうえ,事案の悪質性,重大性,常習性に鑑みれば裁量による保釈も相当ではないとして,保釈許可決定を取り消しました。
被告人側から最高裁に対して特別抗告がされたところ,最高裁では,権利保釈事由には該当しないが,上記のような審理経過や今後追起訴が予定されていないこと,被告人の妻が身元引き受けを誓約していること,これまでに前科前歴がないことといった事情を挙げて,保釈金1500万円で保釈を許可した一審裁判所の保釈許可は裁量の範囲内で相当であったとし,これを取り消した高裁の決定は取り消さなければ著しく正義に反するとして,高裁の決定を取り消しました。
保釈を認めるかどうかという件では,た~まに,最高裁で逆転で認められたりすることがあるのですが,その基準ははっきり言ってよく分りません。
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