既に広く報道されましたが,判例時報2207号などで紹介された判例です(最高裁平成25年9月26日判決)。

 

 

 

婚姻届を提出していない事実上の夫婦のもとに生まれた子につき,出生届で記載すべきとされている嫡出子か嫡出ではない子かの別について記載せずに届け出ようとしたため,子どもの戸籍への記載,住民票の作成が拒否され,7年以上に亘り,戸籍も住民票もないという状態となってしまいました。


 

 

本件の夫婦(父母)は,以前にも,住民票の不作成などについての義務付け訴訟を提起していましたが,最高裁まで争ったものの認められず(最高裁平成21年4月17日判決),その後,子どもが学齢期に達したことから,改めて本件訴訟を提起し,住民妙の作成義務付けなどのほか,国家賠償などを求めました。

 

 


なお,本件係属中の平成22年に法務省から,「嫡出子か嫡出でない子かの別について記載のない届出であっても,補正内容が明らかであればその旨を付記したうえで届出を受理し戸籍等を編成すべし」という内容の通知が出され,本件についても戸籍や住民票が作成されたため,最高裁では,国家賠償請求に関する部分のみが争われることになりました。




 

嫡出子か嫡出でない子かの別を記載させるという戸籍法49条2項1号の規定が憲法14条1項に定める平等原則に反するという主張に対して,最高裁では,嫡出子か嫡出でない子であるかの記載は,それ自体で法的な効果が発生するという訳ではないので,反しないとしました。

最高裁では,嫡出子と非嫡出子の相続分の差異についての違憲判決も出たところですが,これは民法900条4号後段という規定がそのような効果を定めていたのであって,戸籍法に根拠があるという訳ではないだろうということです。

 


 

もう少し平たく言うと,戸籍法はあくまでも手続法なので,嫡出子の親はネットでも届出ができるが,嫡出でない子の親はネットで届出はできないとかいう手続上の区別があったとしたら平等原則違反になり得る,届出自体と届け出た後の効果は根拠が別なので別問題というところでしょうか。



 

むしろ,上告した夫婦たちの主張,心情としては,「嫡出」という言葉のニュアンスが,「正統な」とか「正妻から生まれた」というものであり,「嫡出でない」という文言は差別的な用語であるという点にあったのではないかと思うのですが,この点については,法令上の用語の問題であってその表現の当否を論じるに帰するものである,として憲法14条1項の問題とは無関係という判断がされています。