金融・商事判例1432号で紹介された広島高裁松江支部の判決です。




以前報道があった件で記事にしたこともありましたが,その事件の控訴審判決です。
http://ameblo.jp/egidaisuke/entry-11501196443.html



振り込まれた約9分後に差し押さえたということですが,直接,県の職員が金融機関に出向いたのでしょうか。。

記事ではそこまでの事実はよく分りませんでしたが,おそらくそうなのではないかなあという気がします。



判決文によると,本件では,鳥取県税局は,本件租税滞納者について地元にある7つの金融機関に対して残高照会や1か月分の取引履歴照会を行い,その回答がなされた今回滞納処分(差押え)を行った口座の履歴事項には,差し押さえることが禁止されている児童手当の振り込みがされていること(日付や金額など)が記載されていたということです。




それから1年後,本件滞納処分が行われましたが,児童手当が送金された当日の午前9時頃に,当該支店に,徴税職員が直接出向いて,銀行職員に,その時点での残高と履歴事項を照会し,その場で差押えの通知を行ったということです。




県側は,児童手当が振り込まれていることを予測して差押え処分をしたわけではないという主張をしましたが,本件口座に児童手当が振り込まれることを認識していたと認定されました。

徴税の実務として,金融機関まで出向いて口座の差押えをするというのがどの程度一般的なのかまではよく知りませんが,上記のような経緯では児童手当が振り込まれることを狙い撃ちしたとされても仕方ないかと思います。




年金などの差押え禁止債権であっても,それが一旦金融機関の口座に振り込まれた場合は,差押え可能な預金債権に変化するというのが最高裁の判例ですが,本件にでは,児童手当を差し押さえたのと実質的に変わりはなく,児童手当を差押え禁止とした児童手当法の趣旨に反するものであるとして,一審同様,県が差し押さえた金額約13万円については返還が命じられることになりました。




なお,一審では県に対する国賠請求として慰謝料の請求も認められていましが,これについては,控訴審では,預金になれば差押え可能という最高裁の判例もあったのであるから,県の行為も違法なものではなかったとして,国賠請求を認めた部分については取り消されました。




本件について確定したということです。







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