判例タイムズ1388号で紹介された事例です。
末期腎不全などで入院中の病院で人工透析を行っていた事故当時71歳であった女性が,看護師と看護助手の2名に付き添われながら,透析室に入室したところ,転倒し,事故の約4か月半後に死亡した件について,遺族が病院と看護助手らを相手取って,合計約1億3500万円の損害賠償を請求したという事案です。
裁判所が認定した事故の概要としては,女性が,看護師と看護助手の2名に付き添われて車いすで透析室に入室し,透析用ベッドの近くまで移動した後,看護師と助手の二人で女性の背後から女性を支えて踏み台の上に立たせ,女性はベッドに両手を付いて前傾姿勢となっていたところ,看護師は車いすを別の場所に移動させるためにその場を離れ,残った助手もコップをテーブルの上に置くために支えていた手を離したところ,女性があおむけに転倒しというものでした。
裁判所は,女性が車いすの使用を許可されたのが事故の2日前であったことやそれまでストレッチャーで透析室まで移動していたのを本件事故当日初めて車いすで移動させて透析をする初日であったことなどから,病院と看護助手には女性の転倒を予見し,転倒しないように介護を継続すべき注意義務があったとしました。
ただ,病理解剖の結果,女性の直接の死因としては急性,慢性膵炎であったことから,転倒と死亡との間に因果関係までは認められないとし,ただ,本件転倒によって女性が意識障害から回復することのないまま死を迎えざるを得なかったことについて女性本人と遺族に対し合計600万円の慰謝料を認めました。
なお,本件では,遺族は,転倒の原因について虚偽の説明をしたなどとして慰謝料を求めていましたがこれについて棄却されています。
本件は控訴されたということです。
■ランキングに参加中です。
■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)