刑事も問題になることがありますが,民事でも,遺言の有効性などを争ったりする場合に,文書作成者とされる人の筆跡の真贋が争われることになります。
それで,筆跡鑑定を検討するということになるのですが,鑑定といっても,裁判所が選任した鑑定人が行う正式な鑑定手続による場合と,当事者が独自に筆跡についての調査をお願いする私鑑定と呼ばれるものに大きく分れることになります。
多くの場合,私鑑定は調査会社(興信所)に依頼するということになります。
だいぶ昔ですが,とある案件で提訴前に筆跡の真贋について調べたいということがあり,とある調査会社の営業社員を事務所に呼んで話しを聞いたところでは,
「正式な鑑定には100万円くらいかかる」
「鑑定をお願いするのは元警察の技官だった先生だ」
「正式な鑑定は最高裁でも有効だと認められたものになりますが,そこまでいかなくても,簡易な鑑定ということで30万円くらいでできる。簡易な鑑定結果では裁判に証拠として提出することが難しいので,証拠提出するということであれば30万円がもったいないことになるので,正式鑑定にしてほしい」
などと訳の分らないことを抜かしていました。
挙句の果てには,私が資料として見せたものを見て,「ああ,これは(偽造を)やってますね」などと言っていました。
営業して仕事を取りたかったということなのでしょうが,まるでいかがわしい美術品のセールスのようであきれました。
今でもその調査会社は私のところには出入り禁止にしています。
私鑑定で自分に有利な結果が出たからといって,そのまま訴訟で通るとは限りません。そもそも,特に筆跡私鑑定の結果というのは,公正性が担保されていないので,信用性が割り引かれるのが普通です。
裁判所が鑑定人まで選任したのに,裁判所がその鑑定人の筆跡鑑定結果を信用できないして知りぞけた裁判例もあるし,そもそも鑑定していないのに遺言を偽造であるとして結論付けた裁判例もあります。
勿論,一つの参考資料として在ればあったに越したことはないのでしょうが,いい加減な営業トークに騙されるようなことがないように気を付けてほしいと思います。