判例時報2170号で紹介された事例です(東京地裁平成24年9月25日)。




大手の家具製造・販売会社が,自動車の部品等を製造する会社から工場用地として使用していた土地建物を,現況有姿で買い受けました(代金約155億円)。




売買契約には,「将来,土壌や地下水に汚染が発見されたとしても,売主は瑕疵担保責任を含めて一切の責任を負わない」との特約がありました。

なお,売買契約前に,売主は,土壌汚染対策法で定められた調査,分析を行って,一部に基準超過の汚染が見つかっていたことから(鉛とテトラクロロエチレン),その部分の土壌改良工事は実施したうえで,買主に引き渡すこととされていました。その調査・分析の際に見つかった有害物質には六価クロムという物質は含まれていませんでした。




しかし,その後の調査で,下水から,基準超過の六価クロムについても見つかってしまい,その部分の土壌改良工事の費用などの負担をどうするかということが,先ほどの特約との関係で問題となりました。




買主側は,過去に,売主が本件土地上で六価クロムを使用していたことがあったことから,売主は悪意,重過失であったとして,免責の特約が適用されないと主張しましたが,裁判所は,過去に六価クロムを使用していたからといって,土地の中に六価クロムが含有されていたことについて知っていたかどうかということはストレートに言えないとし,また,本件では法令に従って土壌汚染についての調査・分析がされていたのであるから,売主は本件土地に六価クロムが含有されていたことについて知っていたとはいえないとし,本件免責特約が適用されるとしました。




また,本件では,売主は,六価クロムの仕様履歴について買主に告知していなかったようで,売主は告知義務違反も主張しましたが,裁判所は,宅建業法の重要事項説明の範囲を超えて,六価クロムの使用履歴についてまでの告知義務は負わないとしました。




その他,説明義務違反や錯誤といった買主の主張はすべて退けられ,契約上の地中埋設物の撤去義務にかかる費用として約5848万円のみが認容されました(請求額約4億2700万円)。




本件は控訴されています。





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