ニュースなどでも取り上げられましたが,最高裁で生活保護法の老齢加算の廃止については生活保護法に反するものではないという判断が下されています(①判例時報2145号平成24年2月28日第三小法廷②判例時報2151号平成24年4月2日第二小法廷)




②については,福岡高裁では老齢加算の廃止を違法としていましたが,最高裁で取り消されています。




老齢加算というのは,もともと,昭和35年4月に創設されたもので,70才以上の高齢者には観劇,雑誌,通信費等の教養費,毛布,老眼鏡,湯たんぽ,菓子,茶などの特別の需要があるだろうということを根拠に支給されていたものでした。




しかし,平成15年の厚労省での専門委員会において議論がされ,①70才以上の高齢者にのみ特別の需要があるとはいえず,老齢加算については廃止すべきである②但し,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるように引き続き検討する必要がある③激変緩和措置を設けるべきであるという3点を柱とした中間とりまとめがされました。




これを受けて,厚労大臣は平成16年度以降3年間の激変緩和措置を経て,老齢加算を廃止とする内容の保護基準の改定を行ったというものです。



老齢加算廃止の違法性を訴えた原告団は,老齢加算の廃止は,生活保護法56条の「被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない。」という規定に反すると主張しました。




これに対し,最高裁は,この規定は保護基準自体を減額改定された場合にまで適用されるものではないとして,この主張を退けています。

なお,福岡高裁は,前記の中間とりまとめが行われた4日後には老齢加算の廃止を決定した厚労大臣の判断はきちんと判断したとはいえず,裁量の逸脱があるから,保護基準の改定に正当の理由があるとはいえず生活保護法56条に反するという判断を行っています。保護基準の改定の是非を生活保護法56条の判断に取り込んでしまっているのですが,最高裁の考え方としては,生活保護法56条の問題と保護基準の改定の是非の問題は分けて考えるということのようです。




生活保護法56条の問題はならないとしても,老齢加算の廃止という保護基準の改定がこの法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」(生活保護法3条)

「(保護の)基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。 」(同法8条2項)に照らして許されるかについては別途検討が必要になりますが,最高裁は,そのような判断は専門的技術的判断であって行政府の裁量に委ねられているという従来の最高裁の立場を踏襲したうえで,本件老齢加算の廃止は許される範囲内であるとしています。







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