刑事裁判の終了に当たり,検察官は事実及び法律の適用について意見を述べなければならないこととされています(刑訴法293条1項)。いわゆる論告求刑といわれるものです。




争いのない通常の自白事件であっても,少なくともA4一枚程度の用紙にそれなりの分量で被告人の悪い事情が文章で連ねられており(薬物事件の論告などではコピペっぽいところもありますが),最後に求刑意見が述べられるという体裁です。




しかし,数年前,即決裁判手続という手続において,至って簡単な論告求刑というのを経験しました。




即決裁判手続きというのは,検察官が申し立てて,被告人・弁護人が同意し,裁判所も相当と認めたときに開始される手続で,最大の特徴は判決には必ず執行猶予が付くということです。要するに,検察官さえ「執行猶予でいいですよ」と公式にいっている事案ということです。




その件はオーバーステイの案件でしたが,検察官から交付された紙は「論告メモ」という題名で,次のようなチェック方式になっていました(文書一切なし)。


□前科あり  □前科なし

□強制退去歴あり  □なし

□不法在留期間が短い  □長い

□自白・反省

□公判において二度と罪を犯さないと誓約




正直,こんなことでいいのかと思いました。




即決裁判といっても弁護人にとっては手間暇は通常の件と変わらず,かえって,準備が短く(即決裁判の期日は待機日として空けてあったが,2週間くらい前に依頼の連絡があったという記憶。通常の案件よりも短い),大変だったという記憶があるのですが,このような論告メモを見せられて,検察官は「テヌキ」じゃないかと思いました。




即決裁判だけの運用なのか,普通の件でも行われているのかについては,その後即決手続をしていないことや,このような論告を見たのは後にも先にもこれが最後でしたのでよく分りませんが,この弛緩した雰囲気がその後の検察不祥事に繋がったのではないかとひそかに思っているところです。




■ランキングに参加中です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。