法律相談を担当していると,標記のような相談を受けることがたまにあります。
訴えられて裁判所から訴状が届き,裁判所が同封している「答弁書のひな形」の用紙を見て自分で答弁書を書こうと思うが,どうにもうまくゆかず不安なので,弁護士にチェックしてもらいたいという相談です。
これまで何件もこのような「答弁書をチェックしてほしい」という相談を受けてきましたが,相談時間内に相談者と一緒に訴状を逐一確認して答弁書を書き上げたということは,ただの一度もありません。
相談時間というのはたいてい30分か長くても1時間程度です。この程度の時間で争いのある案件で,裁判所に提出する書類をチェックした上に書き上げろといわれても,これは無理なのです。
訴状には原告訴えに至った事実,理由が記載されているわけですが,答弁書では,主にこの事実に対する認否反論を行うことになります。
簡単そうに見えますが,これは結構苦労するところで,長い訴状だと1時間あったとしても無理です。認否の仕方を間違えると,敗訴を招きかねませんので,慎重にすべき作業なのです。
短い訴状なら1時間もあれば大丈夫ではないかとい思われるかもしれませんが,短い訴状ということは,その分,背景事情などの細かなところは省略されているということですので,そこの辺りの事情を聴こうと思ったら,それだけで時間がかかります。
また,短い時間で答弁書を一緒に書き上げて,「弁護士が確認したんだから大丈夫」ということで裁判所に提出したところ,見落としなどがあって不利になったなどということになったら,矛先がこちらに向かってきかねません。
ですので,標記のような相談を受けた場合は「原告の請求を棄却する・・」といった定型的な部分については教示しますが,後の事実関係の細かいところについては,認否の仕方や注意点などを申し上げるにとどめるということになります。
訴訟自体は自分で担当するが,書類については弁護士の指導を仰ぎたいということであれば,やはり,それなりの報酬を支払って弁護士に時間を取ってもらうべきだと思います。
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