判例時報務2639号で紹介された裁判例です(東京地裁令和7年3月3日判決)。
本件は、マカオのカジノで賭け金として借り入れた金員の返還請求がされたという事案で、被告は、賭博のための金員の貸付は公序良俗違反であると主張しました。
日本国内でこのような貸し付けが行われた場合にはストレートに民法90条の公序良俗違反が問題となりますが、本件においては、マカオで貸し付けが行われており、マカオ法が適用となることは争いが無かったため、まず、通則法42条に該当するかが争点とされました。
法の適用に関する通則法
(公序)
第42条 外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない。
判決は、次のような点を指摘して、本件においては通則法42条に抵触することはないとして、被告に対し約3806万香港ドルの支払いを命じています。
・マカオの施設で行われるカジノについては日本国民が行ったとしても我が国の刑法は適用されないが(刑法2条、3条)、これき外国で日本国民が賭博をしたとしても我が国の社会風俗が直ちに乱されるものではなく、社会秩序の観点から処罰を要しないからである。日本国民により外国で行われる賭博と国内で行われる違法な賭博とを直ちに同一視することは相当ではない。
・原告がマカオの法令に基づいて施設を運営、管理し、本件貸付も同法令に基づいて適切にされたものである。被告がマカオの本件施設を訪れて貸付の契約の締結、貸付の実行、その費消まですべてマカオにおいて適法に完結していることに照らすと、我が国での賭博のために金銭が貸与されてその返還を求める場合と比べて、日本国内の金論観念や国民経済に与える影響は小さい。
・わが国では、一定の政策目的のもとで競馬、競輪など公営競技の背戸が設けられており、適法なギャンブルとして実施されて久しい。また、カジノの設置についてもカジノに関する法令が制定されている。我が国におけるカジノを含むギャンブルに対する規制については、マカオにおける諸制度(許可された場所以外での賭博経営の禁止など)とも一定の類似性を見出すことができる。
イスラム法に基づくタラーク離婚について日本の公序に反するものとして無効と判断するなどした事例 | 弁護士江木大輔のブログ