判例タイムズ1537号で紹介された事例です(東京家裁令和7年3月13日審判)。

 

 

本件は、父親が別居中している子ども(長男)との面会交流を求めた事案(令和5年8月申立て)ですが、その前に一度面会交流の申立てがなされ(令和3年4月に調停申立)、調停では話し合いがつかず、令和4年2月、家庭裁判所は、父親と長男の面会交流について、長男は申立人とは会いたくない旨の意向を示しているところ、かかる意向は長男の真意に基づくものと認められ、長男の年齢(小学3年生)に照らすと、その意向は尊重すべきものであるから、申立人と長男との面会交流を実施することはできず、将来的に面会交流を実施する時期等をあらかじめ定めることも困難であるとして、申立てを却下していました(前件審判)。なお、二男との面会交流については、第三者機関の付添型を利用して、月1回2時間実施する内容の審判が下されていました。
 

 

前件審判では、家庭裁判所調査官による調査がなされ、長男は、①父親との同居時の生活について、相手方に勉強や宿題を見てもらっていたが、辛いと思うようなことはなかった一方、父親から塾の成績が落ちた際に怒られたほか、10回を超えて殴られたり、お腹を蹴られたりしたことがあること、②キャンプに行きたくない旨を伝えた際に、父親から殴られ、無理やり連れて行かれたことがあること、③登山は疲れるため、父親に嫌だと言ったが無理やり連れて行かれたこと、④父親と会えていない状況については、殴られたりしないから、安心であり、嬉しいこと、⑤今後の生活の希望としては、父親と会わずに暮らして行きたいこと、⑥二度と父親が会いに来ないことがあったら良いことなどを、目に涙を浮かべながら述べた旨の報告がされていました。

 

 

本件の申立てにあたり、父親は、長男の真意を確認するため、本件においては子どもの手続代理人の活用が必要である旨主張したので、裁判所は職権で長男の手続代理人を選任し調査に当たらせました。

そして、長男の代理人が、長男と面談して意向等を聴取した上、電話でも補足的に確認したところ、長男は、①二男が父親と面会交流していることは二男から聞いているが、今は楽しくてもこのあと何があるか分からない、ボクみたいに嫌な思いをするのではないかと心配になるから、会うのはやめて欲しい、②ボクもお父さんといて嫌だった思い出がよみがえって嫌なので、あまり聞きたくないと思う、③会いたくないという気持ちは全く変わらないなどと述べ、同旨の長男の陳述書も提出されました。

 

 

こした結果を踏まえて、本件でも、長男との面会交流の申立ては却下とされています。

 

 

子どもの手続代理人 | 弁護士江木大輔のブログ