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銘木屋のひとりごと

京都の老舗銘木店の経営者という観点から、日々の生活を通じた京都の老舗が守り伝えてきた衣食住にまつわる伝統的な暮らしの文化を少しでも世間にご紹介していきたいという願いで拙いブログをはじめました。

皆様、本年もよろしくお願い申し上げます。

今年最初のブログ更新になります。

 

先日、弊社が関わっている重要文化財の保存修復工事現場から

切り妻屋根の妻飾りに使用する

磨ヨシの簾(スダレ)の注文をいただきました。

 

一般建築の場合、切り妻屋根の正面の尖った部分に通気口を

兼ねて開口部を作り、その開口部を木や金属、プラスチックなどで

格子状に目隠ししたものを矢切りといいます。

 

切り妻屋根の矢切り

 

特に数寄屋建築や茶室などは、その矢切りの意匠に拘り、

壁を様々な形にくり抜いて、その開口部に竹の格子を取り付けたり、

ヨシやガマなどの草物を詰め貼りにしたりして、

妻飾りと称して建物の外観の意匠の一部となります。

 

茶室の矢切り(妻飾り)その1

 

茶室の矢切り(妻飾り)その2

 

茶室の矢切り(妻飾り)その3

 

この度、注文のあった妻飾り用のヨシの簾は、

製作するサイズが170㎝×80㎝、ヨシの直径3㎜なので、

当然、磨ヨシの長さ(横幅)が80㎝で、

それを白糸で編んで170㎝の縦長にするものだと

思いこんでいたのですが、詳しく話を聴くと、

実際は170㎝の長さの磨ヨシを編んで、

80㎝の横長にしないといけいというものでした。

 

ところが、通常ヨシの長さは1M~1.2M位なので、

長さ170㎝、しかも直径3㎜というものは存在しません。

 

そこで苦渋の選択で、磨ヨシを縦に継ぐことで了解をいただき、

しかも継いだ箇所の上に白糸が絡むように編むようにして

ジョイント部分が目立たないようにするということで

製作させていただきました。

簾の職人さんも手間のかかる大変細かい作業になりましたが、

見事に170㎝×80㎝、直径3㎜の横長の簾が完成しました。

 

 

 

 

重要文化財に指定された重厚な茅葺き屋根の茶室の妻飾りは、

真新しい磨ヨシの簾と交換され、今後50年位は

その瀟洒で侘びた佇まいを保つことでしょう。

 

 

 

 

今年も早いもので、あと4日となりました。

私にとっては、いろいろと気忙しい一年でしたが、

振り返ってみると、お陰様で実りある一年となりました。

 

ところで今年の冬の寒さは例年になく身体に応えます。

北海道や東北では爆弾低気圧が猛威をふるっているようですが、

北山杉の里も山々はすっかり雪化粧となり、

北山丸太の生育環境としては、今後大雪による雪害さえなければ、

この晩秋から冬の寒さは丸太の成長を押さえ、

とくに丸太の冬目(年輪の黒い部分)が緻密で堅く形成されますので、

目の詰んだ光沢のある丸太ができるのです。

 

 

先日、弊社のお得意先から床柱に使用する北山杉の

天然縮緬(チリメン)絞丸太の問い合わせか゛あり、

実際の丸太の写真を撮り、提案させていただきました。

 

 

チリメン絞丸太は、親となる杉の新芽を挿し木して育てるのですが、

日当たりや土壌などの気候条件にかなり左右されるため、

真円で、全体に均一に縮緬(チリメン)模様があるものが

大変珍しいのです。

 

 

弊社のモデルルームでは、

八帖の広間の床柱に北山天然チリメン絞丸太を使用していますが、

独特の縮緬模様が床の間に仄かな景色を添えながら、

それでいて、お道具の存在の邪魔をしない、

お茶室の床柱として理想的とも言うべき役割を果たしています。

 

 

 

木々の紅葉も終わりを迎え、銀杏の葉が散り始め、

日に日に冬の訪れを感じる季節となりました。

 

このひと月、仕事絡みで色々と忙殺されてブログの更新も

すっかりご無沙汰してしまいました。

 

これと言ってブログに載せることもなかったひと月でしたが、

今思うと、本来ならば同じ物事や出来事を

目の当たりに見たり聞いたりして心を動かされることがあっても、

あまり忙殺されてしまうと、

只、目の前の仕事をこなすことのみに神経が集中し、

美しいものを見ても何も感じなくなるということに気づかされました。

とても悲しいことです。

 

臨済禅師が仰せになった「随處楽」の心のあり方を

見失っていたように思います。

「随處楽」とは、「何時でも何処でも楽しめばよい・・・・」

即ち、楽しいことは何時でも何処にでも存在していて、

只、人間はそれに気づかないだけであるということだそうです。

かけがえのない人生、常に「随處楽」の姿勢を忘れてはいけません。

 

 

先日、息子の所属するスズキメソードの上級者の方々が

年に一回の演奏会を催され、拝聴させていただきました。

「色んななバッハに出会う」というタイトルで

JSバッハのヴァイオリン協奏曲、オーボエ協奏曲、

そして変奏曲をライブで沢山聴かせていただき、

久々に心に染み渡る癒しのひとときでした。

 

 

かけがえのない人生、無駄にせず、

毎日毎日を楽しみたいものです。