藤吉side

 

 目を覚ますと、なんだか懐かしい天井が目に入った。

 

 楽屋で限界を迎え、倒れそうになったところまでは覚えている。

 

 

 

藤吉「ん?」

 

 

 

 ふと右手に温もりを感じ、身体を起こしてみるとなぜか麗奈がいた。

 

 右手の温もりの正体は麗奈が手を握っていたことだった。

 

 部屋を見渡すと、麗奈の大切にしているぬいぐるみや、私との写真が飾られている。

 

 どうやらここは麗奈の部屋のようだ。

 

 

 

守屋「あ、夏鈴ちゃん起きた?体調どお?」

 

 

 

 私が動いたことで目を覚ましたようだ。

 

 

 

藤吉「なんでここにいるの?」

 

守屋「無理して楽屋でぶっ倒れて、病院行って、そのまま麗奈の家にマネージャーさんに運んでもらった。」

 

藤吉「まじか…。迷惑かけた、ごめん。すぐ帰るから。」

 

守屋「何言ってんの?」

 

藤吉「え、いや、ここにいても迷惑だし邪魔でしょ。」

 

守屋「はぁ…散々心配させてずっと手離さなかった人が何を言うか。」

 

藤吉「ご、ごめん…。」

 

守屋「とりあえず熱が下がるまではこの家からは出しません。大人しく寝ててください。」

 

藤吉「はい…。」

 

守屋「食欲は?」

 

藤吉「少し…」

 

守屋「おうどんとお粥、雑炊どれがいい?」

 

藤吉「えっと…」

 

守屋「うん、雑炊だね。ちょっと待ってて。」

 

 

 

 まだ何も答えていないが部屋から出て行ってしまう麗奈。

 

 

 

藤吉「ちょっ、ちょっと待って。」

 

守屋「話しは後で聞くし、私からも話しがある。でもまずはお腹に何か入れよ?すぐ戻ってくるから。」

 

藤吉「うん…。」

 

守屋「あ、いや、一緒にリビング行こうか。その方が何かあったらすぐ行けるもんね。」

 

 

 

 さっきから私は何も言っていないのに、思っていることを察して動いてくれる。

 

 

 

藤吉「ありがとう。」

 

 

 

 私は麗奈のその優しさに甘えることしかできなかった。

 

 

 

 

 

守屋「できたよ〜。熱いから気をつけてね。」

 

藤吉「ありがとう。」

 

 

 

 久しぶりの麗奈の作った料理。

 

 前までは毎日のように食べてたっけな。

 

 

 

藤吉「熱っ!美味しい。」

 

守屋「もお〜、熱いから気をつけてって言ったじゃん。全部食べれそう?」

 

藤吉「ゆっくりなら。」

 

守屋「いいよ、ゆっくりで。そのかわり全部食べてね?どうせ粉薬飲まないと思って雑炊に混ぜたから。」

 

 

 

 どうやらそこまで読まれているようだ。

 

 

 

藤吉「美味しいし、麗奈が作ってくれたから全部食べる。」

 

守屋「夏鈴ちゃんいい子!麗奈も食べよーっと。」

 

 

 

 熱々の雑炊を2人でフーフーしながらゆっくりと食べる。

 

 最初は黙って静かに食べていたが、沈黙を破ったのは麗奈だった。

 

 

 

守屋「ねぇ、夏鈴ちゃんは私のこと飽きちゃった?」

 

藤吉「ううん、そういうわけではなくて…。」

 

 

 

 麗奈に飽きたというわけではない。

 

 むしろその逆だ。

 

 

 

守屋「じゃあ…嫌い?」

 

藤吉「それは違う!」

 

守屋「そっか、とりあえず嫌われてないみたいでよかった。」

 

藤吉「ごめん。」

 

守屋「私ね、ずっと夏鈴ちゃんと一緒にいたから基本は夏鈴ちゃんの思ってることとか考えてることはわかってるつもり。でも、今、夏鈴ちゃんが私に対してどう思ってるかわからないの。ごめんね。だから夏鈴ちゃんの気持ちを聞きたいの。」

 

藤吉「私は…、」

 

 

 

 私は今でも麗奈のことが大好きだし、愛している。

 

 でも楽屋で仲良く話していれば、メンバーからラブラブと茶化され、一緒に写っている写真がネットに上がればファンの方からもラブラブだの色々言われる。

 

 私は何を言われようが構わないが、色々言われることで麗奈の負担になるのが嫌だった。

 

 だから自分から麗奈に話しかけることはなくなり、そのうち麗奈からも話しかけられることはなくなった。

 

 そして完全にプライベートで話すこともなくなり、気がつけば1カ月も経っていた。

 

 本当はお出かけとか色々したかったけど、自分から避けてたくせにそんなことを言い出すこともできず、自分でもどうしたらいいかわからなくなっていた。

 

 

 

守屋「そっか。話してくれてありがと。今度は私の話も聞いてくれる?」

 

藤吉「もちろん。」

 

守屋「ありがと。私もね、夏鈴ちゃんのこと大好きだし、愛してるよ?さっきも言ったけど、一応夏鈴ちゃんのことは色々知ってるし、わかってるつもり。

 

でもやっぱり、ちゃんと言ってくれないとわからないこともあるの。

 

夏鈴ちゃんが何を抱えてるのか、何と戦っているのか、時々わからなくなるんだ。

 

だから、些細なことでもいいし、どうでもいいような薄っぺらいことでもいい。

 

なんでも夏鈴ちゃんと気持ちを共有したいし、もっと夏鈴ちゃんのことを知りたいの。

 

それと、夏鈴ちゃんの隣にいれるなら私は誰に何を言われても平気だよ?

 

夏鈴ちゃんと離れる方が私には辛い。」

 

 

 

 私は麗奈のことをわかったフリをしていただけで、逆に傷つけてしまっていた。

 

 何にも麗奈のためになっていなかった。

 

 

 

藤吉「ごめん、麗奈のこと何も考えれてなかった。本当にごめん。」

 

守屋「私こそ自分の気持ちをちゃんと伝えれてなかった。ごめんね。」

 

 

 

 麗奈は何も悪くないのにごめんと言ってくる。

 

 私が麗奈の気持ちもちゃんと考えればよかっただけなのに。

 

 

 

守屋「私はさ、また夏鈴ちゃんと一緒にいたいと思ってる。これからもずっと。」

 

藤吉「私は…」

 

 

 

 私も一緒にいたいとは思っている。

 

 でも、また今回みたいに気付かないうちに麗奈のことを傷つけてしまうのが怖い。

 

 

 

守屋「夏鈴ちゃん、今どんなこと思ってる?」

 

藤吉「怖い…。麗奈のこと気付かないうちにまた傷つけてしまいそうで…。でも…一緒にいたい。」

 

守屋「それだよ。今みたいに、少しずつでもいいから思ってることをお互い口に出そ?そうすれば誤解も勝手な思い込みも減るんじゃないかな。」

 

藤吉「…わかった。これからは沢山頑張って伝えていく。だから、我儘かもしれないけどもう一度麗奈の隣にいさせて欲しい。」

 

守屋「もう一度も何も、麗奈の隣は夏鈴ちゃん専用だよ!」

 

藤吉「ありがとう。」

 

 

 

 いつも麗奈の優しさに助けられてきた。

 

 でもこれからはその優しさに甘えるだけじゃなく、自分からも動かないといけないことを麗奈は教えてくれた。

 

 

 

守屋「さ、残りも食べちゃお?それから熱測ってみようね。」

 

 

 

 麗奈、ありがとう。