??「もうやめたまえ!」
突然誰かの声がアリーナ中に響き渡った。
一瞬で静まり返り、声のした方に注目が集まる。
??「君達は恥ずかしくないのかね?」
そこには車椅子に座った老人がいた。
なぜかその隣には葵ちゃんもいる。
白狼「誰だ!」
??「私はこの学園の学長の原田玄一郎。権力は弱い者をいじめるためではなく、守るためにあるのじゃ。」
原田って、葵ちゃんのおじいさん?
学長は葵ちゃんに車椅子を押されてステージの方に進む。
学長「守屋君、君をこの学園から退学及び除名処分とする。自分の過ちを認め、反省するのじゃ。」
守屋「やれるもんならやってみなさい。もし私を退学にすればこの学園の運営は成り立たなくなるわよ。」
学長「その心配はいらん。先程君の父の会社が潰れて代わりに菅井君の父が多額な寄付をしてくれたのだ。もうすぐで警察も来る。負けを認めなさい。」
それとほぼ同時に十数人の警官が入ってきた。
警官「守屋茜さん、貴方の父親の件で署まで御同行願います。」
守屋「断る。」
警官「さっさと来い!」
白狼「会長に触るな!」
あっという間に警察とホワイトウルフの乱闘になってしまった。
守屋「お前らに私の何がわかる!」
警官「いいから大人しくしろ!」
やはりプロには勝てないらしく、守屋先輩はすぐに取り押さえられてしまった。
守屋「小林由依!私はあんたのことを一生許さない。この人殺し!」
小林「ちょっとまってください!それ、どういうことですか?」
守屋「忘れたとは言わせないよ。あんたは私の大切な妹を、麗奈を、殺した。」
麗奈。
その名前を聞いてすぐにあの子の顔が浮かんだ。
それは、中一のときに屋上から飛び降りた親友の名前だった。
まさか麗奈が守屋先輩の妹だったなんて。
守屋「そんなやつが首席で入ってきたのが許せなかったんだよ。しかも史上初の満点という記録を出して。」
小林「麗奈の事は本当にすいませんでした。でも、だからと言って手を出すのは間違ってます。しかも私だけじゃなく理佐達も巻き込んで。」
守屋「あんたはそのぐらいのことをしたんだよ!」
小林「だから、やっていいことと悪いことがあるじゃないですか!守屋先輩のやったことは悪いことです。」
守屋「黙れ!黙れ黙れ黙れ!」
守屋先輩は自分を押さえつけていた警官を突き飛ばし、私の方に向かってきた。
右手には黒い物が握られている。
小林「いい加減にしろ!!」
パーン!
アリーナに発砲音が響き渡った。
私の足元には理佐がうずくまっている。
小林「理佐!しっかりして、理佐!」
理佐「よかった由依が無事で。」
小林「死んじゃ嫌!」
理佐「ばか、死ぬわけないじゃん。茜がちゃんとチョッキの部分を撃ってくれたから大丈夫だよ。」
よく見てみると、確かに血は出ていなかった。
どうやら銃弾を受けた衝撃で倒れ込んだみたいだ。
一方、守屋先輩は警察官に取り押さえられていた。
警官「守屋茜、あなたを銃刀法違反で現行犯逮捕します。」
手錠をかけられて諦めがついたのか、先程とは打って変わって大人しくなった。
警官に連れられ、最後に私を睨んだ守屋先輩の背中がどんどん小さくなっていく。
この急な展開に誰もがついていけてないだろう。
でも私は確信した。
この戦いに私達は勝ったのだ。
理佐「由依、お疲れ様。よく頑張ったね。」
理佐が私を抱きしめ、私の目からは涙が溢れた。
学長「小林君、君にお願いがあるのだがいいかな?」
小林「なんでしょうか。」
学長「君に次の生徒会長を頼みたいのじゃ。もちろん拒否権はある。どうかね?」
小林「私でよければ…。」
学長「そうこなくては。では、小林由依を学長権限で生徒会長に任命する。」
その瞬間、アリーナ中から盛大な拍手が巻き起こった。
司会「では、色々ありましたが、新生徒会長の小林さんから一言お願いします。皆さんお座りください。」
先程の騒ぎで立ち上がっていた生徒も徐々に座っていく。
私は深く深呼吸をした。
小林「生徒会長に任命されました、小林由依です。選ばれたからには全力でこの学園を良くしていこうと思います。上手くいかないこともありますが、その時は皆さん、私を助けてください。その分私も皆さんを助けることを約束します。そして、会長権限によりホワイトウルフを解散することを宣言します。」
司会「ありがとうございました。それではもう一度小林さんに大きな拍手を!」
私は今までに感じたことのない感情になった。
ヤンキーだった私がこんなにも多くの人に受け入れてもらえるなんて。
ステージから全体を見回すと、普段厳つい顔をしている工業科の生徒も涙を流して喜んでいた。