あの日から私は熱を出し、4日間学校を休んだ。

 

 38度から全く下がらないし、食欲もない。

 

 宿題は葵ちゃんが届けてくれるから一応やるけど、私からしたら簡単すぎてすぐ終わるからまた暇になる。

 

 愛佳さんも仕事でいないから今この家には私しかいない。

 

 

 

小「暇だな…。」

 

 

 

 携帯で適当に音楽を流す。

 

 

 

小「いつだってそばで立っててやるよ、悪意からの避雷針。」

 

 

 

 いつも渡邉さんが口ずさんでいた曲。

 

 私もその曲が好きになり、時には2人でハモったりもした。

 

 なんだかんだ言って私って渡邉さんのことがまだ好きなのかな…。

 

 そんなことを考えながら横になっていると部屋のドアをノックする音が聞こえた。

 

 

 

小「はーい。」

 

琥「ただいま。調子どう?」

 

 

 

 琥珀だった。

 

 もうそんな時間か。

 

 

 

小「熱は下がらないけど身体は昨日より楽だよ。」

 

琥「そうか。よかった。これ買ってきたからお腹空いたら食べろよ。」

 

 

 

 そう言いコンビニの袋からゼリーを出して渡してきた。

 

 

 

小「ありがとう。わざわざごめんね。」

 

琥「気にすんなって。じゃあな。」

 

小「待って!」

 

 

 

 私は無意識に琥珀の袖を掴んでいた。

 

 

 

琥「どうした?」

 

小「1人じゃ寂しいから隣にいて欲しい…。」

 

琥「わかった。着替えてくるからちょっと待っててな。」

 

 

 

 なんであんなこと言ったんだろう。

 

 いつもなら言わないのに…。

 

 きっと熱のせいだ。

 

 

 

琥「お待たせ。なんかして欲しいことある?出来る限りするけど。」

 

小「大丈夫。隣にいて手握ってくれるだけでいい。」

 

琥「わかった。ここにいるからもう少し寝ときな。」

 

 

 

 そう言えば昼の薬を飲んでいなかった。

 

 

 

小「薬…、とって。」

 

 

 

 薬を飲むために身体を起こし、口に水を含む。

 

 正直この薬は不味くて飲む度に吐き気がする。

 

 でも今回はいつもより酷い。

 

 

 

小「うっ…、袋…ちょうだい。」

 

 

 

 琥珀が素早く私の口元に袋を広げて背中をさすってくれる。

 

 

 

小「ゲホッ、ハァハァ…、」

 

 

 

 私は座っているのも辛くなった。

 

 

 

琥「寄り掛かっていいよ。そっちの方が楽だろ?」

 

 

 

 その言葉に甘えて身体を預ける。

 

 落ち着くまで時間がかかったが、その間ずっと琥珀が手を握って背中をさすってくれていたから不思議と安心だった。

 

 

 

小「ありがとう。落ち着いた。」

 

琥「また気持ち悪くなったらすぐ言えよ。」

 

小「琥珀って優しいね。」

 

 

 

 琥珀は顔を真っ赤にした。

 

 

 

小「あれ?まさか照れてる?」

 

琥「て、照れてねぇし。俺ちょっとトイレ行ってくる。」

 

 

 

 絶対今のは照れてたな。

 

 いつもの不良琥珀よりも可愛かった。

 

 吐き気も完全に治まり眠たくなってきた。

 

 

 

小「5時か、もう少し寝よう。」

 

 

 

 私は再び深い夢の中へと落ちて行った。