原「ゆいぽん、ありがとう。」

小「大丈夫だった?でも本当に助けたのは私じゃないから。あれ?」


 既に渡邉さんの姿はなかった。
 いつもお礼を言う前にいなくなってしまう。


原「どうしたの?早く教室もどろ?」

小「あ、ごめん。そうだね。」


















 朝のことが気になったまま、授業が始まった。
 授業内容は、中学で習った数学の復習。もともと数学が好きな私は退屈だった。
 入学前に教科書とワークの問題は解きおわっているため、やることがなかった。






 先生の話をなんとなく聞きながら、窓の外に視線を移すと、工業科の生徒がグラウンドでサッカーをしていた。
 その中でも一際目立つ女子生徒がいた。
 フットワークが軽く、男子生徒の間を素早くドリブルで抜けて行き、あっという間にゴールの前までボールを運びシュートする。
 そして、ボールは綺麗な弧を描きゴールネットを揺らした。


先「小林由依、頭が良いのはわかるが前向くぐらいはしろよ。」


 先生に注意されてしまった。
 それでも私は先生にバレないように横目でグラウンドを見ていた。


小(あの人多分絶対持てるだろうな…。)













キーンコーンカーンコーン


先「はい号令!」

「気をつけ!礼!」
「「ありがとうございました。」」

先「小林明日もよそ見してたら宿題倍な。」


 最悪。そりゃあ、かっこいい子がいたら気になるでしょうが。









原「ゆいぽん初日から注意されたね。」

小「だって正直言って授業つまらないし。」

原「良いなー頭よくて。あ、次体育じゃなかったっけ?早く着替えないと。」


 次体育ならもしかしたらさっきの人とすれ違えるかもしれない。
 そんな期待を胸に、着替えて体育館に向かった。