日本ではほとんど報道がされていないと思いますが,私が所属するUniversity of California (カリフォルニア州立大学)では,学生や非正規研究者を中心に大規模なストライキが起きています.

 

私の所属する研究所の学生もみんないません.

以下のNew york Timesの記事にも報じられています.

 

「え,学生がストライキ?授業に不満があるの?」

と思われる方がいるかもしれませんが,彼らは給与待遇に不満を持っているのです.

 

日本の大学は世界でも珍しく,学部を卒業した大学院生を雇用することなくタダ働きをさせる超ブラック教育機関だと世界からは見ることができます.

 

欧米やその他の国の大学では.基本的に大学院生(graduate students)は給料をもらって生活をしています.修士(Master)の学生は研究も少しやりますが,ほぼほぼ授業に出て単位を取ることが仕事のようなものです(この辺りは大学によっても少々異なります).博士課程の学生も最初の1〜2年間は授業に集中し,その後数年をかけて研究に集中し給料を貰いつつ学生生活を送ります.アメリカでは,大学院生も立派な社会人労働者と見なされているわけです.

 

逆に欧米の人からすると「日本の学生は,どうやって生活しているんだ?」とよく聞かれます.私からは「一部の人は無返済の奨学金(日本学術振興機構のDC)や指導教員に潤沢に予算があれば学生を雇うけど,ほとんどの学生は親からの援助で生活しているよ」と答えます.この日本の大学生の状況は世界的に見ても珍しいので,欧米の人はこの話をすると「?????」となってしまいます.

 

学生に給料を払って高い教育研究水準を維持することは成果では常識なのです.

ここで言う学生とは,大学院生のことを示すので,学部生は含まれないと思ってください.

 

なので,学生達も日本で言う労働組合みたいなものに参加していて,色々と盛り上がって11月14日から大規模なストライキが始まったわけです.そして,今2週間目が終わったところです.教授などの所謂正規職員の人は,もちろん通常通り働いていて学生達のストライキに頭を悩ませています.このような大学での大規模ストライキは全米でも初めてのことだと聞きました.

 

まず学生達は,授業をボイコットしています.「授業をボイコットすることは違うんじゃないか・・・」と言うのが教授達の共通認識なようですが,とにかく行動をするのが学生達です.そして,連日デモ行進を学内の至る所で行っています.もちろん一部の学生は授業に出ていますが,20人のクラス中3〜4名くらいの出席率といったところです.

 

これが私の研究所の建物前の道で行われていた規模の小さいでも団体です.道路を占拠し,車が通れないようにして研究所の業務を妨害しています.しかしこれらのストライキに関わる行為は,労働者の認められた権利ですので,大学側もこれを止めるわけにはいかないのです.

 

で,彼ら学生達が何に不満を持っているかというと,給料なわけです.

以下のページに今の給与水準と大学からの改善案が示されています.

上記のページから給与価格を引用し,日本語に訳し日本円(約$1=140円)に換算し以下に示します.

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ポスドク:フルタイムで雇用された研究者.
年収: $55,632 — $66,600(770〜924万円

学術研究者(Academic Researcher): フルタイムで外部資金で雇用されている研究者.基本的に,自分で研究費を獲得してそこから自分の給料を払っている人達です.
年収: $49,000 — $242,900(686〜3400万円

大学院生(学生)研究者(これが所謂学生達の水準です).
年収: $22,005 — $43,119(310〜600万円

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日本人からすると非正規の研究者でもかなり高級取りな印象ですよね.そして,学生も日本の平均年収である433万円(2020年)程度は貰えています.最大の3400万に驚いたかもしれませんが,研究者のごく一部のとても優秀な人達は,何千万の収入がもらえることがります.

ちなみにこのUniversity of Californiaでのポスドクの給与水準は,日本の大学での助教〜若い教授くらいの給与水準です.だから,海外で仕事したくなっちゃいますよね・・・.

 

実際にどの程度学生達がもらっているか教授達に聞いたところ35,000ドル(490万円)程度だそうです.そして,ストライキを通じて学生何を要求しているかというと,昨今の物価高に対応するために

 

「給料の100%アップ(倍!)」

 

いや,いくらなんでもそれは無理ですよ.で,大学側は4〜10%程度の給与アップを提案していますが,学生達は納得しません.しかし,実際に家賃はここ10年ほどで倍かそれ以上の価格になっているので,妥当な要求ではあるんですよね.

 

私の研究を手伝ってくれている学生もスト中でメールの返事もないので,研究が一部止まっています.

このストライキがいつ迄続くかわかりませんが,一部の人は数ヶ月か一年近く続くのではないかと予想しています.

 

以上アメリカの大学のストライキ事情でした.