昭和の時代の「頑固オヤジ」は、家庭に帰ると「メシ・風呂」などの単語だけで生活していた人が少なくないようです。今の時代ならこんなことが通用するはずもなく、下手をすれば奥様に愛想を尽かされてしまうでしょう(笑)。
令和となった昨今においても、特に小中学生の間で会話の中で「文章」が成立せず、「単語」だけを多用する子が目立ちます。これは非常に大きな問題だと考えています。
例えば算数において、
「この問題はどのように解いたのですか?」
と質問しても、答えは
「掛けた。」
これだけです。これではどこをどのように解いたのか、指導する側としても全くわからず、非常に困ります。さらに問題なのは、このような会話に単語しか使わない(使えない)子は、そのために文章を構築する能力に大いに欠け、作文などはまさにメチャクチャ、当然読解力も極めて劣ってしまう上に、当の本人がその事実についてさほど問題視していないという袋小路に迷い込んでしまっている状況なのです。
この問題は、そもそも能力が高いか低いかの問題ではなく、日々の生活の中での会話内容の乏しさに一因があるものと考えています。お腹が空いたら親に「ごはん」というだけで求める食事が出てくるのであれば、子供としてはそれ以上の言葉を発する必要はないのでしょう。
ただし、それは家庭の中では通用するかもしれませんが、こと勉強においては大きなハンデキャップになることは間違いありません。
当塾において、塾生がこのような受け答えをした場合、私は極めて厳しく窘めます。前述したとおり、塾生本人としては問題意識が全くないので、何を叱られているのか理解できず、ポカーンとした表情を浮かべることが多いのですが、特に受験生の場合、このような現状は致命的ですので、極力矯正させるように強く指導しています。「算数が苦手だから、頑張らなくては!」などと、ある程度の問題意識をもって取り組んでくれれば大いに改善が見込めるのですが、そもそも「何が問題なの?」という意識のままでは、どの程度まで指導が行き届くのか、大いに不透明です。まずは、
「そりゃ、絶対にダメなんだよ!」
という問題意識を本人に植え付けることが重要なのではないかと感じています。
とはいえ、お子様を塾で四六時中監視する訳にもいかないのが現実です。ご家庭におかれましては、保護者様にもご協力を頂き、家族との会話の中でも「単語生活」をお辞めいただくことをぜひお願いしたいと思います。それがお子様の国語力を引き上げることのみならず、ご家族の間のコミュニケーションをより円滑にするひとつの手段だと考えております。
学力の向上は、学校や塾だけが頑張っても力不足であることは否めません。ご家庭と塾が連携し、普段の生活の中でも意識的に行動することが重要だと考えます。
まずは、お腹が空いて帰宅しても、
「ごはん。」
というたった一言で済ましてしまうような「単語生活」から脱却することを心がけてください。
頑張りましょう!