2015/10/14(水)~ ワイングラスで美味しい ~
■お世話に成ります。
メンタルヘルス薬剤師・松葉芳典です。
ワイングラスで美味しい日本酒をご紹介します。
晩御飯の時に、気軽に飲めるお酒です。
詳しくは、編集後記で…
■プルースト『失われた時を求めて』(14)
長編小説『失われた時を求めて』を読み解いて行きます。
長編小説の主題を遠くから照らし出す雛形「スワンの恋」
ーーゆきとどいた解説と対話で味読する『失われた時を求めて』ーー
■ソナタと恋の発生(2)
さてピアニストが弾き終えると、スワンは、
そこに居合わせたほかのだれに対するよりも、
ピアニストに親切なことばをかけた。それはこういうわけである。
その前の年、スワンはある夜会で、
ピアノとヴァイオリンで演奏された曲を聴いたことがあった。
最初は、楽器から出る音の物質的な特徴しか味わえなかった。
そして、ヴァイオリンの、細いけれど、しっかりした、
密度の高い、主導的な、小さな線の下から、突然、
液体のぴちゃぴちゃいう音のように湧きあがってきたのが、
ピアノのパートの、多様で、分割できない、平らで、
たがいにぶつかりあう拡がりで、それがまるで月の光に魅せられ、
転調してモーヴ色に揺れうごく波のように湧きあがってくるのを見たときは、
すでに大きな喜びだった。
しかし途中でスワンは、自分を喜ばせているものの輪郭がはっきり識別できず、
それを名づけることもできなかったが、いきなりそれに魅了され、
まるで夕べの湿った空気のなかにただようバラのある種の香りに
私たちの鼻孔をふくらませる特性があるのと同じで、
通りすぎながら自分の心をこれまで以上に大きく開いてくれた
楽節だかハーモニーだかを__スワン自身にはわからなかったが
__把えようとしていた。
もしかするとスワンがこれほど不分明な印象を受けたのは、
音楽を知らなかったかもしれない。
しかしその印象は、もしかするとただひとつ純粋に音楽的といえる印象のひとつで、
拡がりをもたず、隅から隅まで独創的で、
ほかのいかなる次元の印象にもできないものだった。
この種の印象は、いっときのあいだ、いわば無実体(シネマテリア)のものである。
たしかに私たちがそのときに聴く音は、その高さや長さによって、
私たちの眼前の、さまざまな大きさに拡がったり、
アラベスクを描いたり、私たちに拡がりと細さ、
安定感と気まぐれを感じさせてくれたりするのを目指している。
