【高齢者の性行為について】
1.米国の高齢者アンケート調査報告
米国人はかなり高齢になっても性的にアクティブだが、高齢層ほどコンドームを使用しない傾向があり、性感染症のリスクが懸念されるいう報告がある。14歳から94歳の米国人5300人以上を対象に、インディアナ大学がインターネット上で行った性行動に関する調査の結果が、最近の米医学誌Journal of Sexual Medicineに発表された。同大のこの調査は、米国で実施された性調査としては最大規模で、幅広い年齢層を対象にした性調査も初めてだといわれている。
コンドームの使用に関する質問に対しては、年齢層によって回答に開きがあり、10代では性交渉をしていないという回答が多かったが、性交渉をしているという者ではコンドームの使用が「標準」となっていた。過去10回の性交におけるコンドームの使用率は、10代男子が79%、女子が58%だった。10代のコンドーム使用が普及していることは公衆衛生の成功事例だと評価されている。一方、米国人はかなりの高齢(80代前後)まで性的にアクティブであるにも関わらず、50歳以上では、性交渉の際にコンドームを使用していたのは、男性5人に1人、女性4人に1人であった。
加齢によって避妊を気にせずにすむようになっても、自分とパートナーを性感染症から守る必要があることを、認識しないままの人が多いことが指摘された。高齢者は、それまでの関係が終わったり、相手が亡くなっても、ほかの相手とデートしたり複数のパートナーと関係をもつ場合がある。妊娠することはなくても性感染症のリスクは依然として存在するので、高齢者の再教育が必要だと結論されている。
調査では、ベッドの中で独創的な米国人の性行為の多様さが明らかにされた。直近の性交渉で回答された性行為の内容の組み合わせは全部で41種類に上った。性生活に対する男女差も大きかった。男性の85%が、直近の性交渉の際に相手の女性がオーガズムに達したと思っていたのに対し、実際にオーガズムに達したと答えた女性は64%だった。普段のパートナーのとき時のほうが欲情しやすく、快感を覚え、ぼっき機能の問題や痛みが少ないと答えたのは男性で、女性は、関係をもったことのない相手のほうが欲情しやすかった。マスターベーションの回数は、男性の方が女性よりも圧倒的に多かった。
最も特筆すべきは、米国でようやく公然とマスターベーションについて語られるようになった点だと論評されている。人間性に関するオープンで率直な話題に、自然で喜ばしいこととして、性やセクシュアリティを迎え入れる時であり、生殖についてのみ語るだけでは十分でない。それだけでは、米国民のセクシュアリティや性的行為の多様性と、正確に向き合えていないという評価もある。
2.オーストラリアの高齢者施設におけるセックス調査報告
セックスは基本的人権の1つだが、高齢者の介護施設では、往々にして入所者たちの性生活は否定される。しかし、年老いてもセックスの喜びは変わらず、むしろ高齢者たちにとっては残された数少ない楽しみのひとつでもあると、オーストラリアの研究者らが専門誌Journal of Medical Ethics に発表した論文で指摘している。
科学的根拠に基づいた介護を実践する、オーストラリアの高齢者施設職員らによるこの報告によると、自宅では性生活を楽しんでいた初期の認知症患者も、施設に入所したとたんに状況は一変する。施設におけるプライバシーの欠如、職員らが持つ老いに対する先入観、自分が行う行為への承諾意思を示すことが困難な入所者について起こりうる法的問題を施設側が恐れていることなどが、主な要因だと指摘されている。
人間関係の形成、肉体的な親密関係、性的な表現、これらはみな基本的人権であり、高齢化の過程においてもごく自然で健康的なことだと主張されている。しかし、ほとんどの介護施設で、入所者が性生活を続けることを念頭においた指針はなく、職員訓練も行われていない。高齢の認知症患者についてはインフォームドコンセントを得る基準の法的設定が難しいという点もあるが、入所者の性生活を否定する根拠にはならないと結論されている。
3.スパインの研究報告
最近の65歳以上のスペイン高齢者を対象とした研究報告(J Sex Med. 2012 9:121-9.)では、男性の62.3%、女性の37.4%が活動的な性行為を行っていることが明らかにされた。配偶者がいない人では、性行為に非活動的な傾向が見られた。また、ポータブルトイレが必要な状態や2種類以上の薬剤を服用中であるような健康状態の不良な人では、男女を問わず、性行為は高率にみられなかった。
通常実施される具体的な性行為の内容は、キス、抱擁、性交などであった。性行為が非活動的な理由は、配偶者が身体的な病気である(23%)、興味がない(21%)、男やもめ(23%)であった。
これらの結果から、スペインの高齢者の性活動状態の現状、性差、影響因子が明らかにされた。以前の世代の常識と変わって来ていることが注目される。
4.高齢者の性についての映画・他の報告
映画『ラブ・ランチ』で、65歳の女優ヘレン・ミレンが演じたのは初老の売春宿の女主人。熱いベッドシーンを披露しただけでなく、映画のプロモーションのためトップレスでニューヨーク誌に登場して、ネット上で称賛を浴びた。セックスに積極的な今どきの高齢者の象徴と評価された。
高齢者はセックスに関心があり、おそらく実際にセックスするケースも増えているとする研究もある。75~85歳の男性の40%近く、女性の17%近くが定期的にセックスをしており、さらにそのうちの男性の71%、女性の51%が質の高い性生活を送っているという。
全米退職者協会の調査では、45歳以上の40%が1カ月に最低1回はセックスをしているという。高齢の女性の場合に、セックスの回数が減るのは性欲がないからではなく、健康上の理由が原因かもしれないと指摘されている。
これまでセックスに関する研究で高齢者が見落とされてきた背景には、高齢者に対する差別もあるようだ。高齢者はセックスをしないと研究者が決め付けていた可能性があるとの指摘もある。研究報告を待つまでもなく、高齢者はこれまでになくセックスをするようになっているとの指摘もある。現代では、タブーはなくなり、多くの高齢者が高齢者なりのセックスの方法を見つけている。例えば、男性ホルモンのテストステロンは午前中に多く分泌されるので、朝食の直後にセックスをするのもその1つである。女性にとっては、60歳からのセックスのほうがいい面もある。かえってのびのびとできるかも。予定外の妊娠にもびくびくしなくてすむという更年期についてのコラムもある。
しかしながら、わが国の高齢者の性行為の実態については、なお不明な点が多いのが現状である。
5.施設における高齢者の性的問題行動と対応
認知機能低下が高度な利用者が、女性職員の胸を触るなどの性的行動の他に、時には他の利用者に対する性的暴力行為がみられることもある。このような被害を未然に防ぐことは、経験の浅い職員にとっては容易でないことが多い。受け入れる施設側の責任は、問題行動のある利用者に対しても、それによる影響を受ける可能性のある職員や利用者に対しても、どちらにも及ぶと考えられる。
性の問題については、十分な検討が必要であるが、性的欲求それ自体については、通常、肯定的に捉えて対処すべきと考えられている。しかし、自己の性的欲求を満足させる権利は誰にでもあるからといって、行動抑制ができない認知症の行為を全て受け入れることはできない。施設の中では、他の利用者との権利の主張が拮抗した場合には、優先順位が意識されねばならない。
職員の中では避けがちになる議題であるが、担当ケアマネや家族の方も交えて、サービス担当者が施設で行えるケアとその限界について話し合って対応を考える必要がある。主治医との連携は欠かせないが、どのようなきっかけや状態が問題行動と結びついているのかについて、検討をする必要がある。施設の体制や、利用者の状況によって異なるが、利用者や家族の立場に立って考えることも重要である。その上で性的逸脱の対処行為は、第1に性的欲求は人間である以上当然で受け入れられるべきと考えることが優先され、第2にそれを満たす他の方法を考えることが重要となる。
高齢になっても性的欲求は保持されますが、多くの場合は、生理的欲求から心理的欲求に比重が移り、性交によらない、肌のふれあいによる安らぎ、異性との楽しい接触、様々な活動などで満足する方向へと変わっていく。認知症利用者の場合は、障害のため自分の欲求の発露行動が本能的行動にしか結び付けられていないが、対処法を考える場合には、他の方法で昇華できるかどうかという部分についての考察も必要である。なお、入所者同士の恋愛を後押しする老人ホームもあるそうだが、職員は他の入所者の嫉妬心に配慮する必要もあるようである。
iPhoneからの投稿
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1.米国の高齢者アンケート調査報告
米国人はかなり高齢になっても性的にアクティブだが、高齢層ほどコンドームを使用しない傾向があり、性感染症のリスクが懸念されるいう報告がある。14歳から94歳の米国人5300人以上を対象に、インディアナ大学がインターネット上で行った性行動に関する調査の結果が、最近の米医学誌Journal of Sexual Medicineに発表された。同大のこの調査は、米国で実施された性調査としては最大規模で、幅広い年齢層を対象にした性調査も初めてだといわれている。
コンドームの使用に関する質問に対しては、年齢層によって回答に開きがあり、10代では性交渉をしていないという回答が多かったが、性交渉をしているという者ではコンドームの使用が「標準」となっていた。過去10回の性交におけるコンドームの使用率は、10代男子が79%、女子が58%だった。10代のコンドーム使用が普及していることは公衆衛生の成功事例だと評価されている。一方、米国人はかなりの高齢(80代前後)まで性的にアクティブであるにも関わらず、50歳以上では、性交渉の際にコンドームを使用していたのは、男性5人に1人、女性4人に1人であった。
加齢によって避妊を気にせずにすむようになっても、自分とパートナーを性感染症から守る必要があることを、認識しないままの人が多いことが指摘された。高齢者は、それまでの関係が終わったり、相手が亡くなっても、ほかの相手とデートしたり複数のパートナーと関係をもつ場合がある。妊娠することはなくても性感染症のリスクは依然として存在するので、高齢者の再教育が必要だと結論されている。
調査では、ベッドの中で独創的な米国人の性行為の多様さが明らかにされた。直近の性交渉で回答された性行為の内容の組み合わせは全部で41種類に上った。性生活に対する男女差も大きかった。男性の85%が、直近の性交渉の際に相手の女性がオーガズムに達したと思っていたのに対し、実際にオーガズムに達したと答えた女性は64%だった。普段のパートナーのとき時のほうが欲情しやすく、快感を覚え、ぼっき機能の問題や痛みが少ないと答えたのは男性で、女性は、関係をもったことのない相手のほうが欲情しやすかった。マスターベーションの回数は、男性の方が女性よりも圧倒的に多かった。
最も特筆すべきは、米国でようやく公然とマスターベーションについて語られるようになった点だと論評されている。人間性に関するオープンで率直な話題に、自然で喜ばしいこととして、性やセクシュアリティを迎え入れる時であり、生殖についてのみ語るだけでは十分でない。それだけでは、米国民のセクシュアリティや性的行為の多様性と、正確に向き合えていないという評価もある。
2.オーストラリアの高齢者施設におけるセックス調査報告
セックスは基本的人権の1つだが、高齢者の介護施設では、往々にして入所者たちの性生活は否定される。しかし、年老いてもセックスの喜びは変わらず、むしろ高齢者たちにとっては残された数少ない楽しみのひとつでもあると、オーストラリアの研究者らが専門誌Journal of Medical Ethics に発表した論文で指摘している。
科学的根拠に基づいた介護を実践する、オーストラリアの高齢者施設職員らによるこの報告によると、自宅では性生活を楽しんでいた初期の認知症患者も、施設に入所したとたんに状況は一変する。施設におけるプライバシーの欠如、職員らが持つ老いに対する先入観、自分が行う行為への承諾意思を示すことが困難な入所者について起こりうる法的問題を施設側が恐れていることなどが、主な要因だと指摘されている。
人間関係の形成、肉体的な親密関係、性的な表現、これらはみな基本的人権であり、高齢化の過程においてもごく自然で健康的なことだと主張されている。しかし、ほとんどの介護施設で、入所者が性生活を続けることを念頭においた指針はなく、職員訓練も行われていない。高齢の認知症患者についてはインフォームドコンセントを得る基準の法的設定が難しいという点もあるが、入所者の性生活を否定する根拠にはならないと結論されている。
3.スパインの研究報告
最近の65歳以上のスペイン高齢者を対象とした研究報告(J Sex Med. 2012 9:121-9.)では、男性の62.3%、女性の37.4%が活動的な性行為を行っていることが明らかにされた。配偶者がいない人では、性行為に非活動的な傾向が見られた。また、ポータブルトイレが必要な状態や2種類以上の薬剤を服用中であるような健康状態の不良な人では、男女を問わず、性行為は高率にみられなかった。
通常実施される具体的な性行為の内容は、キス、抱擁、性交などであった。性行為が非活動的な理由は、配偶者が身体的な病気である(23%)、興味がない(21%)、男やもめ(23%)であった。
これらの結果から、スペインの高齢者の性活動状態の現状、性差、影響因子が明らかにされた。以前の世代の常識と変わって来ていることが注目される。
4.高齢者の性についての映画・他の報告
映画『ラブ・ランチ』で、65歳の女優ヘレン・ミレンが演じたのは初老の売春宿の女主人。熱いベッドシーンを披露しただけでなく、映画のプロモーションのためトップレスでニューヨーク誌に登場して、ネット上で称賛を浴びた。セックスに積極的な今どきの高齢者の象徴と評価された。
高齢者はセックスに関心があり、おそらく実際にセックスするケースも増えているとする研究もある。75~85歳の男性の40%近く、女性の17%近くが定期的にセックスをしており、さらにそのうちの男性の71%、女性の51%が質の高い性生活を送っているという。
全米退職者協会の調査では、45歳以上の40%が1カ月に最低1回はセックスをしているという。高齢の女性の場合に、セックスの回数が減るのは性欲がないからではなく、健康上の理由が原因かもしれないと指摘されている。
これまでセックスに関する研究で高齢者が見落とされてきた背景には、高齢者に対する差別もあるようだ。高齢者はセックスをしないと研究者が決め付けていた可能性があるとの指摘もある。研究報告を待つまでもなく、高齢者はこれまでになくセックスをするようになっているとの指摘もある。現代では、タブーはなくなり、多くの高齢者が高齢者なりのセックスの方法を見つけている。例えば、男性ホルモンのテストステロンは午前中に多く分泌されるので、朝食の直後にセックスをするのもその1つである。女性にとっては、60歳からのセックスのほうがいい面もある。かえってのびのびとできるかも。予定外の妊娠にもびくびくしなくてすむという更年期についてのコラムもある。
しかしながら、わが国の高齢者の性行為の実態については、なお不明な点が多いのが現状である。
5.施設における高齢者の性的問題行動と対応
認知機能低下が高度な利用者が、女性職員の胸を触るなどの性的行動の他に、時には他の利用者に対する性的暴力行為がみられることもある。このような被害を未然に防ぐことは、経験の浅い職員にとっては容易でないことが多い。受け入れる施設側の責任は、問題行動のある利用者に対しても、それによる影響を受ける可能性のある職員や利用者に対しても、どちらにも及ぶと考えられる。
性の問題については、十分な検討が必要であるが、性的欲求それ自体については、通常、肯定的に捉えて対処すべきと考えられている。しかし、自己の性的欲求を満足させる権利は誰にでもあるからといって、行動抑制ができない認知症の行為を全て受け入れることはできない。施設の中では、他の利用者との権利の主張が拮抗した場合には、優先順位が意識されねばならない。
職員の中では避けがちになる議題であるが、担当ケアマネや家族の方も交えて、サービス担当者が施設で行えるケアとその限界について話し合って対応を考える必要がある。主治医との連携は欠かせないが、どのようなきっかけや状態が問題行動と結びついているのかについて、検討をする必要がある。施設の体制や、利用者の状況によって異なるが、利用者や家族の立場に立って考えることも重要である。その上で性的逸脱の対処行為は、第1に性的欲求は人間である以上当然で受け入れられるべきと考えることが優先され、第2にそれを満たす他の方法を考えることが重要となる。
高齢になっても性的欲求は保持されますが、多くの場合は、生理的欲求から心理的欲求に比重が移り、性交によらない、肌のふれあいによる安らぎ、異性との楽しい接触、様々な活動などで満足する方向へと変わっていく。認知症利用者の場合は、障害のため自分の欲求の発露行動が本能的行動にしか結び付けられていないが、対処法を考える場合には、他の方法で昇華できるかどうかという部分についての考察も必要である。なお、入所者同士の恋愛を後押しする老人ホームもあるそうだが、職員は他の入所者の嫉妬心に配慮する必要もあるようである。
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