
一年前、シェイク・マンスール・ビン・ザイード・アル・ナハヤン(39)は、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビ以外ではほとんど知られていなかった。だが今日イギリスでは誰もが彼の名前を知るようになった。経営難に陥った同国のプロサッカーチーム、マンチェスター・シティ(マンシティ)と、名門銀行バークレイズの救済に乗り出したからだ。
アル・ナハヤンはアブダビの王族に連なる家系で、現在はUAEの国務補佐大臣を務めており、アブダビの国際石油投資会社(IPIC)の会長も兼務している。IPICは65兆円に上る巨額の資金を運用するソブリン・ウェルス・ファンド(政府系ファンド)の一部を形成しているが、王族の個人的な遺産はこれに含まれていない。
アル・ナハヤンの純資産額は4,900億円と推定されているが、一族の資産は15兆円にも達する。その大部分は、70年代に石油がもたらした利益の分け前を蓄積したものと思われる。UAEにはアル・ナハヤン以外にも富豪がたくさんいる。だが、自らの名を堂々と名のって国際舞台に登場した富豪は彼が初めてだ。
08年9月、アル・ナハヤンは300億円でマンシティの株式の90%を、タイのタクシン元首相から買い取った。そして、過去最高額となる59億円もの移籍金を払って、ブラジルのスーパースター、ロビーニョをレアル・マドリードから獲得した。
さらに、イギリス金融界の友人から、バークレイズが政府による金融機関の救済を拒否しているという情報を得たアル・ナハヤンは、カタールのソブリン・ウェルス・ファンドと組んで9,600億円の救済案を提供した。