クローゼットの奥に
眠っていた箱の中から
引っ張り出した
卒業記念のサイン帳
淡い檸檬色の
表紙を開けば
忘れられない
ページと出逢う
『憂きことの
なお この上に
積もれかし
限りある身の
力 ためさん』
(※儒学者 熊沢蕃山による)
美術の先生、札(ふだ)ちゃんが
サラサラとペンを走らせ
書いてくれた
あの頃の私は あまりに未熟で
まったくもってピンと来ず
その後の人生で
萎んでしまいそうな心を
何度も 励ましてもらった
『憂きこと』の ひとつは
たいていは
人の命に関わること
追い打ちをかけるように
降りかかる
アクシデント 難題
その度に
札ちゃんが贈ってくれた
このページは
まさしく 私のお札となった
疫病 収まらぬまま
二度目の暑い夏に
震える民
命を救うために
懸命な治療が 施されるも
横たわるベッドは
もはや 足りず
地球まるごと
感染を くい止めようにも
おかまいなしに 争いごとに
身をやつす国ありて
天は嘆き
大泣きをする
闘うべきは パンデミック
洗い流すは コロナウィルス
マスクを 取っ払って
綺麗な笑顔が わかるよう
ウキウキと 逢いたい人に
逢いに行ける
明日の扉 開けるよう
できることを 精いっぱい
『憂きことの
なほ この星のうへ
降りかかれど
鍵となるもの 探し求めん』
『悩みごとよ、来るなら来い。
出来る限り 精一杯、頑張ってみよう』
コロナばかりは 死に至る病なので
来るなら来いとは 決して言えませんが
辛いことや 不運が重なると
めげそうになる気持ちを跳ね返して
勇気が湧いてくる言葉です。
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