勤務先で都心部にあるビルを担当していた頃のことだ。東京都から手紙が来た。当社のビルがGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に接収されていた時代にGHQが敷設した水道管が都道の地下に残ったままになっている。撤去費用の負担を当社に求める内容の手紙だった。
当社流の仕事のやり方では、まず事実関係の調査を行う。事実関係が明らかになったら、法律に照らして撤去費用を負担する義務の有無を検討して結論を出す。
事実関係の調査は不可能だった。GHQが当社に対して水道管を敷設したいという文書を提出したとは考えられない。当社側が記録文書を残していたとしても、30年以上経過しているので文書は廃棄されているはずだ。水道管の位置から推定すると当社ビルに接続されていたと思われた。
東京都が当社に撤去費用の負担を求めてきたのは理不尽だと思った。日本国政府を経由してアメリカ政府に費用の負担を求めるのが筋だ。しかし、GHQが敷設したことを立証する資料は無いのだからそれはできなかったのだろうし、東京都の担当者はそうする意思も無かったと思う。最終的に東京都と喧嘩することを避けて費用負担した。東京都との間では、色々な貸し借りがあって、喧嘩するのは得策で無いとの判断があった。費用は500万円を超えていた。