1.司法とは
司法とは、民事・刑事の裁判の他、行政事件の裁判も含めて一切の法律上の争訟の裁判を
意味し、その作用を行なう権能が司法権。
司法権の例外は
・資格争訟の裁判(第55条)
・弾劾裁判所(第64条)
がある。
2.司法権と裁判所、特別裁判所の禁止と行政機関の終審的裁判の禁止、裁判官の独立
【第76条】
①すべての司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に
属する。
②特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふ
ことができない。
③すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ
拘束される。
(1)司法権の所属
司法権は、すべて裁判所に属する。
例外は、憲法に定められている資格争訟の裁判(第55条)と弾劾裁判所(第64条)。
(2)下級裁判所
下級裁判所には、以下の4つがある。

高等裁判所

地方裁判所

家庭裁判所

簡易裁判所
(3)特別裁判所の禁止
最高裁判所を頂点とする通常裁判所の系列とは組織的な関係がなく、独立して設置された
裁判機関を特別裁判所という。
憲法は、このような裁判所を法律をもって設けることを認めていない。
(4)行政機関による終審的裁判の禁止
行政機関による終審としての裁判は禁止されている。
前審裁判は許されている(裁判所法第3条2項)が、不服があるときは、必ず裁判所に出訴
できる道が開かれていなければならない。
(5)司法権の独立
裁判官は、他の何人の指揮命令・干渉を受けず、自己の裁判官としての良心に従って
独立して裁判を行い、憲法および法律にのみ拘束される。
3.最高裁判所の規則制定権
【第77条】
①最高裁判所は、訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に
関する事項について、規則を定める権限を有する。
②検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
③最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することが
できる。
司法の独立のため、規則制定権は最高裁判所にある。
最高裁判所が定めた規則を「
最高裁判所規則」といい、次の事項を定めることができる。
①訴訟に関する事項
②弁護士に関する一切の事項
③裁判所の内部規律に関する事項
④司法事務処理に関する事項
最高裁判所規則は、最高裁判所の裁判官会議によって制定され、官報によって公布される。
なお、この規則の効力は、それと競合する法律には劣る。
規則を制定する権限は、最高裁判所が有するが、下級裁判所に関する規則については、
下級裁判所に委任することが認められている。
検察官も最高裁判所の定める規則および最高裁判所の委任によって下級裁判所の定める
規則に従わなければならない。
4.裁判官の身分保障
【第78条】
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を
除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれ
を行ふことはできない。
(1)裁判官の身分保障
公正な裁判を行ない、司法権の独立を確保するために、裁判官の身分を保障している。
(2)裁判官の罷免と懲戒
裁判官は、次の3つの場合以外の理由で、罷免させられることはない。
①
裁判によって、精神的、肉体的に裁判官としての職務を行なえないと決定されたとき。
②
公の弾劾-
弾劾裁判所において、罷免の宣告を受けたとき。
③
国民審査-
最高裁判所の裁判官のみ(第79条2項、3項)
懲戒処分は、司法権の独立の観点から、裁判所自身が行なう。
5.最高裁判所の構成、国民審査、定年、報酬
【第79条】
①最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを
構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
②最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はわれる衆議院議員総選挙の
際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の
際更に審査に付し、その後も同様とする。
③前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、
罷免される。
④審査に関する事項は、法律でこれを定める。
⑤最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
⑥最高裁判所の裁判官は、すべて定期的に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、
これを減額することができない。
(1)最高裁判所の構成
最高裁判所は、裁判所の組織体系において最高の位置を占める唯一の裁判所。
最高裁判所の長たる裁判官は、内閣が指名して
天皇が任命を、長たる裁判官以外(14人)は、
内閣が任命して
天皇が認証する。
なお、最高裁判所の裁判官の定年は70歳で、任期はない。
(2)国民審査
最高裁判所の裁判官は、
10年ごとに国民の審査に付することになっている。
そこで投票者の多数が裁判官の罷免を可としたとき、その裁判官は罷免される。
6.下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬
【第80条】
①下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命
する。その裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢
に達した時には退官する。
②下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、
これを減額することができない。
高等裁判所
①相応な員数の判事で構成
②主として、控訴、抗告の裁判権
③原則として3人の裁判官の合議体で裁判する。
地方裁判所
①相応な員数の判事および判事補で構成
②原則として、第一審裁判所。
③原則として1人の裁判官によって事件を扱う。
家庭裁判所
①相応な員数の判事および判事補で構成。
②主として、家事審判法で定める家庭に関する事件、少年法で定める少年の保護事件を扱う。
③原則として1人の裁判官によって事件を扱う。
簡易裁判所
①相応な員数の簡易裁判所判事で構成
②主として小額軽微な事件について裁判する第一審裁判所。
③常に1人の裁判官によって事件を扱う。
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿に基いて
内閣が任命する。
なお、任期は10年で、定年は65歳(簡易裁判所裁判官は70歳)。
7.違憲立法審査権
【第81条】
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定
する権限を有する終審裁判所である。
国が定めた法律や、行政官庁の規則や処分が憲法に違反していないかどうかを審査する
権限を
違憲立法審査権(法令審査権)という。
(1)主体
違憲立法審査権は、下級裁判所にもあるが、最終の判断権は最高裁判所にある。
(2)違憲審査の対象
一切の法律、命令、規則又は処分が違憲審査の対象。
したがって、条例、人事院規則、会計検査院規則なども違憲審査の対象になる。
最高裁は、条約は、限定された範囲(一見して極めて明白に違憲無効の場合)で審査権が
及ぶとしている。また、国家機関のうち、高度の政治性を有する行為については、法的判断が
可能であっても、その高度の政治性ゆえに裁判所の審査から除外され、最終的判断は国民に
委ねられるという考え方(
統治行為論)に立っている。
(3)違憲審査の方法
①法令違反・・・法令そのものを違憲とするもの
「薬事法違反事件」(最大判 昭50.4.30)など。
②適用違憲・・・法令そのものは合憲だが、その適用が違憲とするもの
(4)違憲判決の効力
ある法令が違憲と判断されたときは、その法令は、その訴訟事件についてのみ適用を拒否
されるだけであって、依然として法令自体は効力を有し、その改廃を義務付けられないという
「個別的効力説」が有力な考え方。
重要判例 砂川事件
8.裁判の公開
【第82条】
①裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
②裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した
場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する
犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、
常にこれを公開しなければならない。
裁判の公正を保ち、裁判に対する国民の信頼を得るために、裁判の公開を保障しているが、
裁判官が全員一致で「公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある」と判断した場合
には、対審を非公開とすることができるが、判決は公開しなければならない。
