行事食


行事食とは季節ごとの行事やイベント時に食される料理。


私自身は12月26日や誕生日二日後のケーキや4月5日の柏餅、1月7日のお蕎麦に何の問題も感じず、美味しくいただける強靭な精神力を兼ね備えた人間なのですが、私の取り巻きたちは違った。


毎年クリスマスはそれなりのディナーを予約するが、昨年はクリスマスの数日後に旅に出るので、冷蔵庫の食材の整理も兼ねてチャチャっとしようと思いレストランの予約はしなかった。


街もTVもクリスマスムードなので、土壇場でケーキぐらい買おうかなと思い、何のケーキがよいのか軽く聞いてみた。


やっぱりクリスマスだからカラフルで華やかなフルーツたっぷりのケーキがいいとのことだった。

普段はこの人モンブラン派なのに、モンブランでは地味な茶色の色合いがクリスマスにはそぐわないとの返事。


ゲッこの人たち行事食とても大切にしてる。


この時すごいプレッシャーを感じた。


冷蔵庫の整理とはいえ私は備蓄命なので、冷凍庫には10kg以上の牛肉や蟹、居酒屋レベルのワインやウヰスキーetc.の備蓄があるので、すぐにクリスマスディナーにはなるのだが、フルーツたっぷりの華やかなケーキはない。


フルーツたっぷりのケーキといえばキルフェボン。


キルフェボンに車を飛ばした。

キルフェボンは長蛇の列だった。


おっ!列に並べば買えるんだとプラス思考で列の最後尾に進み、列整理担当者にここに並べばいいのかを聞いた。


驚くべき答えが返ってきた。


「予約しているか、整理券を持っている人しか並べません。」

「次の整理券配布は午後4時からです。」


午後4時って、午後4時で整理券って。

午後4時の整理券をもらって、又並んでケーキ買って帰ったらクリスマス終わってるし。


えっ、事前予約しても並ぶの?

今整理券持って並んでいる人は何時から並んでいるの?


予約もせずにノコノコやってきて、当日買えると思っている私を店員はやや嘲笑ってた。


恐ろしい。

クリスマス恐ろしい。


まずは車に戻りながら携帯を手に取り、フルーツたっぷりのカラフルで華やかなクリスマスケーキ派に事情を説明し、あんたたち甘いよ!と説得した。

次に思い当たるケーキ屋に電話をし、予約なしでもケーキが買えるのか否かの聞き込みを開始。


ご迷惑な話しですよね、超繁忙期のクリスマス当日にケーキ屋さんに電話って。


ヒットした。

やった!私やった!


車を走らせたのはトップスだ。


チョコレートクリームの茶色一色のトップスのチョコレートケーキ。

トップスのチョコレートケーキは丸ではなく四角。


カラフルで華やかとは無縁の茶色一色のトップスの四角いチョコレートケーキ。


聖なるクリスマスのディナータイムに、シャンパン片手に地味な茶色で四角いトップスのチョコレートケーキを前に、コンコンと私の奮闘記を恩着せがましく語った。

私の取り巻きたちは私の労をねぎらいつつも、うるせいなって顔で地味な茶色で四角いトップスのチョコレートケーキを美味しそうに食べていた。


私も必死で買っただけあって、今まで以上に美味しく感じた。


こんなことが昨年あったので、私の取り巻きたちは私と違って行事食を楽しみにしていると分かった。


クリスマスケーキを買うのも簡単ではない。

お金で簡単に解決できる訳ではなく、計画的にしないと手に入れることができないしろもんなんだな。


次のイベントは節分、クリスマスでの失敗を踏まえ、恵方巻きを頼んでおかなくちゃ。