ナナフシをご存知だろうか?


ナナフシとは、木の枝のようなヘンテコな見た目をした昆虫である。


漢字では七節。

とは言え体節が7つというわけではないらしいが、7つイコール沢山+木の節っぽいで七節。


このナナフシ、とんでもなく過酷な一生をおくる。

驚くことだらけなので、何からご紹介しようか。


私が輪廻転生で次回はナナフシ決定なら、生まれ変わらなくてよいと断言しよう。


まずは冒頭でご紹介したナナフシの見た目だが、枝のようだったり葉脈のようであったりと擬態した姿が特徴。

モデル級のスリムさで、解りやすくいうと痩せた細長いカマキリやバッタ的な虫。

このナナフシ、カマキリやバッタに似ているのだが、決定的な違いが飛べない。


虫で飛べないのは致命的だ。


毒的なアイテムも有していないので、攻撃能力はゼロ。

ただただ相手に気づかれないように、木の枝のフリをして身を守るという相手の鈍さありきの防御法、何とも悲しい虫である。


過酷な人生を歩むナナフシの一生は、卵から孵化した直後から厳しい。

孵化したての赤ちゃんナナフシはハネがなく飛べないので、小さく細い体で森の中を歩き回ってエサを探す。

ナナフシ一族は代々痩せ型家系なので、ベイビーたりとて痩せている。

ナナフシのエサは痩せているだけあって、豚の角煮や生クリームなんて勿論食べない、サラダ的な葉っぱだ。


一日中歩き回って葉っぱって。


ナナフシは飛べないのでカマキリやアリ、蜘蛛やトカゲ、カエルや鳥なのどに狙われまくりだ。

見た目は似てるカマキリや、働き者のアリにまで冷たい仕打ちをされるナナフシ。

獲物を探し回っている敵に、攻撃や反撃ではなく枝のフリで相手が気付かず通り過ぎていくのをひたすら待つ。


そんなナナフシ、たった一つだけ身を守る技がある。


仮に敵に脚を取られたとしよう。

このままだと脚を引っ張られ食べられてしまう。

ナナフシ危機一髪のスチュエーション、こんな時。


自切。


なんと脚を自ら切り離す。


想像して下さい。


細い昆虫が、自分で脚を切って歩いて逃げる。

飛ぶんじゃないですよ、歩いて逃走。


涙なくしては観ていられない状況です。


まだいいんですよ若いなら、若いナナフシさんなら、脱皮とともに失われた脚が再生していく。


問題は老けたナナフシ。


年増のナナフシの脚は再生されない。

ちなみに人間も、老化と共にターンオーバーが遅くなり、再生されにくくなる。


もう涙が止まらない。


年増のナナフシは、鳥が近づいて来たと思ったら、まずは葉っぱのフリでフリーズ、バレたら脚切って歩いて逃走。

その後年増のくたびれたナナフシは足のないまま一生を終える。


こんなことなので、ナナフシは勿論短命です。

美人薄命ならぬ、ナナフシ薄命。


報われないナナフシ。


神や仏があったなら、せめてナナフシに翼を授けて欲しい。


よくこんなにも弱いナナフシ、絶滅しないよね。

しかしここに、ナナフシの最大の裏ワザがあるのです。


弱いナナフシ、痩せてて飛べないのですが、なんと卵は硬い。

生まれて木の枝のフリをするだけあって、卵も植物の種のような見た目と硬さ。


卵ですら擬態なんですかね?


ナナフシは生まれる前が最強なんです。


ナナフシの卵は鳥に食べられても硬い卵なので全てが消化されず、生存状態で排泄されその後孵化する。

ナナフシが飛べなくても、自分を食べた敵の鳥を利用して、何百キロも離れた地で子孫を残すことができるのです。


まぁ離れた地で孵化しても、痩せてて細くて弱いのですがね。


絶滅しなければ、何千年後には突然変異で、毒針を持ったナナフシや、翅を持ち空を自由自在飛べる筋肉隆々のナナフシ、尾びれを付け海中を泳ぎ回るナナフシも誕生するかもしれない。


次の世代へ子孫を残すためだけに生まれてきているようにすら思えるナナフシ。

コミカルな見た目とは裏腹に、過酷な運命を背負って生を受けているすごい虫だ。


その名は


ナナフシ