古くからの親しい友は、生まれた子が難病になり、大変な思いをした。
当時は泣き続ける我が子を抱え、命懸けで何度も々医者に食い下がり、高額な医療費を払い、愛情をそそぎ、等々病魔に打ち勝ったのだ。
あれから20年がたった。
病弱だったあの子も、今では立派に働いている。
先日飲み会のお誘いがあり、その子の近況を聞くと、その子はちゃんと働いてはいるが、幼少期の強い薬や手術の影響なのか、あちらこちらに病気があるという。
幼少期の難病を完治させた成功体験から、友がインターネットで各病の名医を調べて、西へ東へと友が通院させているそうだ。
友自身も突然咳き込む日が続き通院、診断は風邪とされ投薬治療をしたが、止まらない咳に納得がいかず食い下がり、胸部X線検査やCTを撮ったが再び風邪での炎症なので、投薬治療でしばらくの様子見との医師の診断。
しばらくの様子見に全く納得ができない友は、PED診断をするも診断は変わらず風邪での炎症。
絶対に白黒付けたいと一歩も引かず、背中から長い針で肺の細胞を取る生検を希望し、診断は胚細胞腫瘍だったそうだ。
その後自分の納得がいく専門医で手術をしたが、担当医も初期中の初期で、咳の症状はないはず、よく発見できたと言ったそうだ。
治って良かったそしてすごい人だと思いつつ、続けて聞くと、自身の高齢の親も西へ東へと名医を求めて友が付き添い通院させ、我が子のレントゲンにも何か映れば医師の様子見では納得が出来ず生検をさせたと話し続けた。
友は自身の通院と愛する我が子の通院の付き添い、大切な親の通院の付き添いと大忙しの様子で、友自身が心配でならないので、白黒付ける検査をするまで納得しないと話した。
医師の診断や治療法に納得がいかず、食い下がり病を治した成功体験から、自分の考えを止められないようだ。
思わず口から出てしまった。
「落ち着いて!」
友の顔色が変わった。
言わなければ良かったと、今は思っている。
あの時、なぜか私は友が気の毒に思えたのだ。
そんな生活は疲れないか、友が心配になったのだ。
世界中の誰しも友も私も平等に1日は24時間しかないのに、友は気持ちが休まるのだろうかと心配になったのだ。