春が待ち遠しいです…


 

自分の情けないことを
忘れてしまいたいです
なくしてしまいたいです



あたたかくなって
私が植えた球根が芽を出して
花を咲かせるのを見ていたい
そのまま枯れないでずっと咲いていてほしい
ただそれをずっと見ていたい
ただ ただ
それだけを眺めてだけ いたい




指輪は
どなたかが拾ってくださったようで
鉄道の遺失物の保管場所に
届いていました



失くしたとしたらここかも
と思った場所へ
(残念ながらそれはトイレなんですが)
何度か問い合わせしていたら
それらしきものあがってきてますね
と…



夫にそれを
取りに行ってもらいました



私たちの結婚指輪は
多くの結婚指輪よりも細めで
なんのデザインもなく
なにかのネジの輪っかのようにしか見えない
シンプルなものなんです
当時百貨店を何件も回って
2人で気に入って決めたものです
刻印できる部分も細く
老眼になってきた私には
もはや読めないくらいの
30年前の小さな刻印




誰かが拾って
内側に刻印があることに
気づいてくれたのだと思います
それを問い合わせたら
それらしきものが届いていると
言われました




こんなこともあるのだと
驚きました




絶対に出て来ないだろうと
思っていたのに
また帰ってきた私の結婚指輪





私は
この帰ってきた指輪のように
人生を取り返せるのだろうか?





ちょっとそんな気持ちになって
指輪は
まるで生まれ変わってくれたかのような
そんな気持ちになり
また指にすることにしたのです



30年間 
ずいぶんはずしているときも
ありました



昔 噴火被害に遭った方を
指輪で確認したと聞いてから
身分証明書のかわりになっちゃうかも…
そんな思いもあり
身につけていました



人生
なにがあるかわからない…



夫の不倫でも
そう思ったし
私が生きてきたこの長い時間のあいだにも
大きな災害や
我が子に起こったトラブルや
兄を救い出し保護できたことや
火事や…



この先
私の人生に
どれだけの時間が与えられているのか
わからないけれど…




どうしても
生まれ育った私の不安体質と
17年前の夫の裏切りから
噛み砕けなかった
私の気持ちのいろいろ…




私のからだがこの世から
なくなった時
この指輪は どこへ行くのだろう…




そのとき
私の気持ちは
どこへ行くのだろう…?




そんなことを考えている私を残して
夫は今日も

女のいる会社へ

出勤して行きました…