ヒャッハー!が 壮絶に 終わる
https://www.filmaffinity.com/en/film883186.html
上記HPより画像お借りしています。
↑後のハーレイ・ジョエル・オスメントである。
○アリバイ・ドット・コム カンヌの不倫旅行がヒャッハー!な大騒動になった件/ALIBI.COM(2017)
監督 フィリップ・ラショー
☆☆☆
出/フィリップ・ラショー、ジュリアン・アルッティ、タレク・ブダリ
ヒャッハー!トリロジー最終章という事で、気合いを入れて鑑賞しました。
まず書いておきたいのは、『真夜中のパリでヒャッハー!』と『世界の果てまでヒャッハー!』ことBABYSITTING1&2……とは関係ない映画だと言う事です。
まあ、そんな気はしていましたがヒャッハー!
ギャグですから、映画ですから、理屈抜きに……こんな言葉の数々が擁護するコメディ映画の数々。
ラショーは違います!
ライトセイバーの動作音は、蛾の羽音ですし、刃がぶつかり合う衝撃音は、蛾が電灯にぶつかってちょっとショートする音です。
ラショーは誓います!
砂で作ったお城が映る時、轢かれるのは子供の方だと。
ラショーは闘います!
ジャン=クロード・ヴァン・ダムを師と仰ぎ、日夜鍛錬に励みます。
……そしてゲームが大好き。
シティーハンターのインタビューでも、「最近はアサシン・クリードの新しいやつを遊んでいるよ」なんておっしゃってましたが、本作でもバッチリ! <アサシン・クリード>を実写化しております(ちゃんと鷹の鳴き声も聞こえる! ワラが山積みの荷車も停めてある! 頭にはフードを被り! カメラは遠くから――レッツ、イーグルダイブ!)。
まあ興奮の坩堝にたたき込まれます。後半は。
……いやあ~、まあ前半も楽しいのですが、結構普通というか。
本作はフィリップ・ラショーの単独での監督デビュー作であるのですが、その為なのかなんなのか「前2作とはおもっきし違う事ヤロー!」という気概が凄いのです。違い過ぎて逆に普通っていう。
まずカメラ!
これはもう、誰がどうみても落ち着いちゃった。新しい事を試そうとしているのは凄くよく伝わってくるしとても大切なチャレンジではあるのですが、特筆すべき点が無くなっちゃった。
編集!
まあ問題なしっていうか。時々『ワイルド・スピード』シリーズみたいに早回し映像を挟むのはいささか……ダサい。
音楽!
……覚えてない(・д・)。
そして脚本!
これは好きですね。前半の恋愛パートでも「カップルが、その2人しか理解できない遊びで盛り上がる」という場面があって最高だったし。
後半も「保身の為に捨てられた女が復讐(および売名)に燃えた結果主人公の嘘がばれる」という、はっきり申し上げて主人公は最低野郎である、というのを強調する展開が素敵です。
必要な嘘っていうのはまあ、あるわけですよね。よくいう優しい嘘ってやつです。でも、その人の為を思ってついた嘘であっても、言葉には自分で責任を持たないといけない。
逮捕され、社会的信用を失い、恋人も去った。
釈放後に恋人に会いに行った場面で、彼女は見知らぬ男を主人公に恋人だと思わせるという「嘘」を実行します。嘘を嘘だと思わずに。ここはお上手でしたね。誰だって、無意識に人を騙す。
自覚的な嘘には罪悪感があり、無意識の嘘だって蓄積していく。嘘は溜まっていく物なので、つきすぎると心が重くなる。
そんな自戒を込めたラストで……主人公が嘘で彼女を取り戻す! そしてソッコーバレる。
さて。ハリウッド映画への言及がまたしても沢山ありました(とはいえエドガー・ライト監督、サイモン・ペッグ&ニック・フロスト主演作はイギリス映画だぜ! 『宇宙人ポール』って事か)
ポニーにペンキを塗ってシマウマ! というハリウッドコメディあるあるの場面とか、砂の城を建てている子供が轢かれる場面とかを観て、「アダム・サンドラー元気でやってるかな?」と思いを馳せてしまいました。その後で、轢かれた子供に水切りの石が命中するのも実にフランク・コラチ的で。
でまあ、とにかく細かく拾ってひろって……のラショー脚本なのですが、例えばジュリアン・アルッティがソーにコスプレして云々とか……まあ童貞は喪失したのだろう程度の想像はこちらでもしますけれど、後日談的オチが何にもつかないんですよね。
タレク・ブダリの密入国者騒動の場面もそうですね。
十分に面白いし、監督としての手腕も見せつけたとは思いますが、ファンとしては若干残尿感の残る映画かな……。