○真夜中のパリでヒャッハー!/BABYSITTING(2014)

監督 ニコラ・ブナム、フィリップ・ラショー

☆☆☆

出/クロチルド・クロ(Clotilde Courauさんは196943日生まれです

https://en.unifrance.org/movie/36349/babysitting#&gid=2&pid=1

上記HPより画像お借りしています。

 

 クロチルド・クロが女神過ぎて……もうフィリップ・ラショーとかどうでも良くなってくる……ああ、もう、なに、これ……恋?

 

 えー、フィリップ・ラショー扮するフランクは日本の「漫画」が特に好きな、フランスのコミック文化である「バンドデシネ」の作家になる事を夢見ている30歳。

 驚くことに、彼が描く作品には効果音として日本語が使われていたりするんですね。「ドキッ」とか割と大きく書かれている。そもそも最後に出版するこの映画と同題の本の表紙に、デカデカと「子守」と書かれているしね。

 書かれているけれど、あのフォントはないだろ!! そして表紙のデザインもちょっと……(売れてるって設定ですからねえ)。

 凄く愛着のある物事を作中に取り入れるのはいいんですけれど、少し使い方が……うーんってなっちゃう。

……でもそんなマイナス部分は軽く吹き飛ばしてくれる映画ですよ! 

ちゃんと遊園地を舞台にしないと成立しない小技を駆使して、「マリオカート」を実写化しましたね! しかも流れるようにお膳立てされた、まったく無理のない実写化にひたすら感動(カートに乗る理由? ……ヒャッハー!)。ちゃんと後続車への妨害として「バナナ」も投げるし「亀」も投げる。横にはピノキオも乗ってるし! 凄いな、このアイディア。しかも誰ひとりとして「マリオカートだぜー」とか言わないんですよ。もう完璧だろ!

 聖書にも書いてある通りです。

 ラショーの手になる実写化作品は幸いである。 

 

 ハリウッド映画への目配せは大量にありますが、決定的に違うのは、ハリウッド映画の多くが結局は主人公たちが逮捕されない為にギャグを制限している(もしくは被害を無視する)のに対し、この映画はひとまず主人公たちが逮捕されるまでを描く。この後の作品でもそうですが、ギャグだからという理由で、起きている事象を軽く扱わない。

 子守が出来ていたか、というと「結果オーライ」ではありますが子供がひとりで夜の遊園地に出かけてしまっているし、その結果として喘息の発作にみまわれ危険にさらされた。そもそも喘息と相性のよくない睡眠薬を使って眠らせたし(この時点でアウトなので、主人公は悪くない的な説はなりたたない)。雇い主の家と車と父親の形見は破壊され、長い間の友人だったペットの鳥は殺された。

 ……いま書いてて気がついたんですけれど、なんで喘息持ちなのにエンツォ・トマシ扮するレミは自分で吸入器持ってないの?

 で、取りあえず子守をしていた息子となし崩し的に楽しい夜を過ごしたと。そしたら子供が懐いてくれたので良かったね、という話です。

 関係性の悪い2人(ついでに関係ない映画のネタバレをするので観客にとっても印象良くない2人)がほぐれるのが、絶叫マシーンで物凄いビビってるお互いの顔をビデオで見る時なんですよね。あのー、きどりっていうか、周りに見せる為の自分が剥ぎ取られたからですよね。あと単純にアドレナリンでまくって楽しくなっちゃった。

 でも全体としては、子供と主人公の関係性についての映画になっていないんですね。そこがいい!

 この映画が描くのは、何気ない馬鹿騒ぎです。

 馬鹿が、騒いで、たのすぃー!! ヒャッハー!!

 何故かというと、何事も楽しんでやった方が良いっしょ? という哲学に対する「いや、責任もって行動するのも大事」というカウンターを描くからです。

 フランクはもちろん、ジェラール・ジュニョ扮するレミの父親も、自身の楽しみを優先させるあまりしっぺ返しを食らった。

 また途中で、「冗談で男通しにキス」させてみたらその2人が死ぬほど落ち込んでしまう、という場面もあります。冗談が過ぎては楽しくない。でも暗くなった雰囲気を打破するのも、楽しんじゃえ! という気軽な気持ちです。

 なので、基本楽しくやりつつ責任を持って暮らそうよ、という大変バランスの良い感じの映画になっています。

 まあヴィンセント・ドゥサニャ扮するエルネストだけは、ひたすら不幸な目に遭い続けるわけですが。なんかこの人が関係する場面だけ、モラルもクソもない描写なんですよね。ちょっとヤクザ入ってるテキ屋のオッサンに金払わないので切れられている、という描写もオッサンが消化器でぶん殴られて大怪我を負う、という展開だし。これも逮捕の一因だろうな……マリオカート展開に入る為には誰かに追われないと行けない訳ですが、ちょっとあのオジサン気の毒過ぎる。

 そしてカメラワークについてです。

 ラショー監督といえば、カメラワークにこだわり爆発! な人ですので、このデビュー作でもそこは気をつけて拝見しました。

 いやまあ、割と普通っつーか(笑)。

 

https://en.unifrance.org/movie/36349/babysitting

上記HPより画像お借りしています。

日本よりお堅い印象の台湾でも公開されているというのに……。

 

https://www.eonline.com/photos/2589/clotilde-courau/99045

上記HPより画像お借りしています。

↑どの写真がクロチルド・クロの魅力を一番伝えられるか、1時間ぐらい悩んだ末に選んだ写真です。