○追憶の森/THE SEA OF TREES

監督 ガス・ヴァン・サント

☆☆☆

出/マシュー・マコノヒー、ナオミ・ワッツ、渡辺謙

https://www.traileraddict.com/the-sea-of-trees-2016/poster/1

上記HPより画像お借りしています。

https://theplaylist.net/gus-van-sants-sea-trees-matthew-mcconaughey-contrived-phony-drama-20160824/

上記HPより画像お借りしています。

 

 青木ヶ原樹海が舞台で、ガス・ヴァン・サントが監督で……って聞いた時は、あの珍作『ジェリー』の退屈さを思い出して冷や汗が背中を伝ったものですが。さてさて、実際に観てみると、これが意外な程にドラマ的起伏に富んでいて、面白かったですね。途中で無理くりアクション場面も出てくるし。

 創元推理文庫から出版されている、キャロル・オコンネルの小説<クリスマスに少女は還る>を読んだ時、非常に日本的な物語だなと思ったんですけれど(理由はネタバレになるので伏せますが)、今回の『追憶の森』もとってもウェットで日本的! でも撮影が乾いた感じがして丁度いい塩梅だったかなと思うのです。

 あと男色要素ね! これ大事!

 なんか今にもマシュー・マコノヒーと渡辺謙がキスしそうな距離感ってんですかね? 観ててドキドキしちゃう要素がなぜか含まれていて。ネタが割れると感動的な場面だったわけですけれど、観ている間は微妙な笑いを誘われました。

 笑いといえば、英語が出来ない僕たちでも理解できる、<ハンサムとグレーテル>のギャグですね! マコノヒーさんの発音だと、ヘンゼルってかハンセルみたいな?感じで、謙さんがハンサムと間違っちゃうわけで笑えますが、ここも感動ポイントだったんだから結構よく出来たミステリー脚本って感じで。

 で、まあ結局ナオミ・ワッツが渡辺謙にトランスフォームして出てくる訳ですが(変身したっていうか、死にそうな男の体に魂が宿った感じかも)……う、う~ん、渡辺謙の女々しい演技ってその表現だったの!? と思うと、結構微妙な心持にされちゃうなあ。ナオミ・ワッツさんがとても好きなので、反発心が芽生えているだけとも自分で思いますが、渡辺謙の演技はちょっとイマひとつだったかもしれませんね。#MeToo

 で、先ほどもちょいと触れましたが、撮影が結構良かったですね(撮影監督はキャスパー・トゥクセン。って『人生はビギナーズ』の人かい!)。日本なんですけど、焚火の撮影の仕方とか、なんというか映画に出てくるインディアンの土地みたいな感じというか……伝わりますかね? どちらも魂とか凄く大事にする土地柄だから、狙って似せたのかなと。

 あとメイソン・ベイツが担当した音楽が凄く良かった。ベイツさんは、allcinema(お世話になりまくり)によれば、映画音楽の担当はこの『追憶の森』一本だけのようですが、電子音楽で有名な方のようです(youtubeで聞けますが、良いですね~)。

 この映画では、おとぎ話感を強調させるホンワカ音楽で最初から攻めてるんですよね。だから変にシリアスぶらない。希望を見つける為の映画ですよ、と音楽で最初から宣言しているんですよ。そのおかげで、安心して主人公の気持ちに寄り添っていられるといいますか。サントラ欲しいなといいますか。

 あとあと、素晴らしかったのが、退院して再び樹海に向かうマコノヒーがUNIQLOの服(だよね?)を着ているってことです! Welcome to Japan!!

 服で何かを表すのって結構難しいと思うんですが、まあもろ赤い服なのでね。命の炎、希望の火、燃えてるね!って解りやすくて感動しちゃった。体を包み込むコートってのも大事な役割を果たしてましたね。

 誰かに何かを教える立場の人間でも、誰かに何かを教えられる立場になれるんだ。聞こう。言おう。知ろう。そういうことを、映画全体で訴えていると思いました。だからこそ、奥さんの魂はキイロ、フユという意味を自分では教えなかったんでしょうね。

 ラスト、元の職場に復帰したらしい主人公の爽やかな姿がみられます。奥さんに、年収たかだか二万ドルで!ってけなされていた事から察するに、前の職場は辛くてやめた(高収入)、今の職場はぬるま湯の様に心地よく何も挑戦せずに働ける(低収入)、だと思うので、元の職場への復帰というのは、逃避から、戦いへ向かっているという事だと思うんです。そう、もちろんフリル付きの帽子を被って……って被らんのかーい!!