「教育データの利活用」が子ども達にもたらすもの(2) | よしだ教室 授業ダイアリー                                                   

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授業で出会った子供達の言葉、表情、そして児童文学の紹介など、
小学生をお持ちのご家庭に情報を提供していきます。
また、子供達の社会環境や自然環境についても発信し、皆さんとご一緒に、子供達の生きていく時代を考えていきたいと思います。

今、私達の「さいたま市の学校と教育を考える市民の会」は、県内、特にさいたま市内保護者にアンケートをお願いしている。

ネット回答ができるので、県内・市内の方には是非ご協力をお願いしたい。下矢印

 

今回のブログでは、このアンケートの背景について触れたい。

少し長くなるが、どうか最後までご一読をお願いしたい。

 

クローバー知らないうちに家庭学習が「覗かれる」クローバー

 

去る6月、私の塾の6年生の母親が、息子から聞いたとして、こんなことを伝えてくれた。

 

   息子のクラス担任が男子児童を呼びつけ、

   「ドリルパークの宿題を、たった4秒しかやってない!

    正答率もゼロ。どういうことだ!」と叱責したらしいです。

   それを聞いた母親の中には「家でやった宿題の時間まで分かってしまうなら

   帰宅したらすぐに宿題をさせないとまずい」と言う人もいます。

 

これには、後日談もある。

 

   今度は「60分もかけて、何やっている!もっと集中してやりなさい!」と

   怒られた子もいたそうです。

 

ドリルパーク」とは、ベネッセが開発した「ミライシード」というデジタル教材の中に入っているアプリで、AI(人工知能)が、問題を提供してくれるものだ。

さいたま市では、2021年度に「一人一台」のタブレットが貸与されたが、その時からタブレットに備えられたアプリだ。

 

      

私は、この母親から聞いた内容をさいたま市の教育委員会の担当者に「どう考えますか?」と質問した。

すると・・・

 

   ドリルパークはこれまでやってきた紙のドリルと同じ性格の物。

   その進捗状況を閲覧することは問題ない。

   また、これまでも、家での学習時間を子どもに聞くこともあったから同じことだ。

 

との返答だったので、私は「家庭学習の情報を、本人や保護者の了解を得ないで、勝手に閲覧しても良いのか?」と聞き返した。

すると・・・

 

   ミライシードについては、学校から保護者に

   「目的」、

   「子どもの教育データを保存すること」、

   「さいたま市の個人情報保護審議会で問題ないと答申があったこと」などを、

   説明するようになっている。そのための文書も送っている。

 

という返答だった。

 

そこで、私は、2点について調べた。

一つは、「ミライシード」に保存された子どもの教育データを、教師はどうやって勝手に見ることができるのか?

もう一つは、市教委から各学校に送っている「説明用の雛形」の文書とはどんな内容なのか?

 

 クローバー「カルテ」という名の付属機能クローバー   

教師は、ミライシードについている「カルテ」という機能を使えば、勝手に子ども達の学習記録を閲覧できると、分かった。

ベネッセは、こんな風に、「カルテ」の機能を「自慢」している。下矢印  

 

 

こんな機能までついているとは驚きだった。

ということは、市内の全校で、教師は子ども達の「教育データ」を、子どもや保護者が知らないうちに勝手に閲覧できることになり、市教委も「問題ない」と認めることになる。

 

この教育データは、子ども自身の物であり「個人情報」ではないのか?

それを、本人の知らないうちに教師が閲覧して良いのか?

閲覧するのなら、本人や保護者に断ってからでなくて良いのか?

 

それに、こんなことを認めていたら、子ども達は家庭学習までをも、「教師」に監視されることになる。家庭生活に「遊び」がなくなる。家庭にまで「学校」という大義が入り込み、それに縛られていくことにならないだろうか?

子ども達の人格形成にも影を落とすように思われてならない。

 

クローバー批判と疑問が百出の個人情報保護審議会クローバー

 

もう一つの「さいたま市個人情報保護審議会」の会事録も取り寄せてみた。

この「審議会」は、これまでも市教委は金科玉条のごとく使ってきた。

いわく「個人情報に関係する案件は、個人情報保護審議会で了解された上で運用されていますから、ご安心ください」と。

 

このミライシードに関する審議会は、2021年3月24日に開催。

そして、直後の4月1日から、ミライシードが運用されている。

20ページに及ぶ会議録を読んで驚いた。

教育委員会からミライシードについての説明があった後、審議会委員の議長から、こんな発言があった。引用したい。下矢印

 

   この審議会へ出てくるのが遅過ぎないですか。

   こういうことはちょっと困るのですよ。

   何でも通ると思っているのではないのですか。

 

議長の言う通りだ。

審議会から「運用開始」までわずか1週間しかないのだから。

 

更に別の委員からも・・・

 

   データ管理、情報提供に関する保護者への説明はどのようになされたのですか。

   (市教委の答弁趣旨:校長会を通して説明してきた。

   4月1日に通知を作り丁寧に説明をしていきたい)

   事実上動き出してからの後追いの説明になりますよね。(中略)

   私が保護者だったら、基本的には反対したいところですけれども。

 

また、ベネッセとの契約は前の年の「10月ぐらい」とのことだから、契約を結んでおいてからこの審議会にかけていることになる。これについても、「この契約は、審議会の同意を得た上で発効するとすべきだった」と、厳しく指摘されている。

 

まだまだ、具体的に挙げればきりがないほどに疑問と批判が続く。

しかし、市教委は文書で「さいたま市の個人情報保護審議会で問題ないと答申があった」と言い切っているのだから呆れる。

「問題ない」どころか、問題だらけの答申ではないか!

子どもや保護者や市民を冒涜しているように思えてしまう。

 

今回、紹介した内容は、今さいたま市で進められている「さいたま市スマートスクールプロジェクト」のほんの一部だ。

「一人一台」のタブレットで、子ども達の個人情報が、子どもと保護者の同意もないうちに民間企業に提供されていく。

そして、家庭の中にまで「個別最適化された学習」という名の大義が入り込み、子ども達を縛っていく。

 

おかしいことには「おかしい!」とはっきり声を挙げ、嫌なことは拒否できるという当たり前のことが認められる「学校」にしてゆかなければならない。

何よりも、子ども達の人権を守り、子ども達の成長を保障するために!

 

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2023年度の設置コース    

*小1国語コース 毎週月曜日      *小2国語コース 毎週月曜日   
*小3国語コース 毎週火曜日      *小4国語コース 毎週木曜日   
*小5国語算数コース 毎週金曜日    *小6国語算数コース 毎週水曜日 

*中学生のための読解・記述コース 隔週土曜日