9月3日、G20を前にして、アメリカ・中国がパリ協定を批准したと公表した。
米中2大排出国が批准したことは、日本などまだ批准していない国々に、プレッシャーになる。
2大排出国の批准によって、パリ協定が年内にも発効する可能性が出てきたことは大きな希望だ。
京都議定書の際には、その枠組みにアメリカ・中国などが入っていなかったため、
日本やカナダ等の国々はCO2削減に消極的な態度をとることを正当化してきた経緯がある。
今回は、その逆になった。
日本でも年内に国会で批准する動きが出てきたという。
日本の「削減目標」が世界の流れに逆行するものであるにせよ、批准を早めることは、大いに歓迎したい。
「よしだ教室」6年生達の取り組み
さて、毎年この季節に、私の塾の6年生達は「温暖化」を学び、「科学論文」を書かされる。
例え、パリ協定が発効し、世界の取り組みが進んだとしても、地球全体のシステムと「温暖化」の関係は、まだまだ分からないことが山ほどある。
4日夜の「NHKスペシャル」でも報道されたように、「21世紀末の世界平均気温は最大4.8℃上昇する」(IPCC報告)というシナリオには、永久凍土が融けて発生するメタンガスは想定されていない。
このこと一つをとってみても、今後の地球が一体どうなってゆくのか、誰も確実なシナリオを描くことができていないのが現実だ。
だからこそ、子供たちには「温暖化」について、その「自然科学」の知見を学び、地球の現実をしっかりと学んで欲しいと思う。
だから、私は、6年生に「学ばせ」、そして「書かせ」ている。
6年生達は、国連機関であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書概要(環境省訳)を資料にして、1ケ月かけ、4回の授業で約1500字~2500字の科学論文を書かされる。
何しろ、環境省がプレゼン用にまとめられた資料だから、グラフと表が中心である。
IPCC報告書から、重要な文言が抜粋されて紹介されている資料だ。
専門用語も多い。
この資料集の重要な箇所を読み解き、私のコメントも参考にして、苦しみながらも懸命に書く。
その姿を見ていると、子ども達に「こんな難しい課題を課して申し訳ない」と思いつつも、やはり胸にジーンとくるものがある。
6年生達の「論文」からの抜粋
私が特に重視している部分は、次の3ページだ。
CO2増加と平均気温上昇との関係を捉えさせたいからである。
環境省HPから転載する。
さらに、IPCC報告書には掲載されていない、次のグラフも子ども達に提示した。
これは、上の2番目の資料にある「二酸化炭素濃度は、・・・・・・・工業化以前より40%増加した」ことを補足するグラフである。
6年生達が書いた文章を抜粋して紹介する。
若干の不正確さはあるのだが、子ども達の成果をぜひご一読いただきたい。
児童I
地球では2011年までに515Gtcの二酸化炭素が排出されており、気温の上昇を2℃未満
におさえる確率を66%以上にするには、二酸化炭素の排出量を約790Gtcにしなくてはな
らない。
しかし、大気中のメタンガス・二酸化炭素・一酸化炭素などの濃度は80万年で前例のない
ほど高い濃度になっている。この温暖化の主な要因は二つあげられる。一つ目は化石燃料
からの排出だ。主な化石燃料は石油・石炭・天然ガスである。・・・・・(後略)
児童U
工業化については18世紀ごろからはじまり、化石燃料からの排出や森林のばっさいなど
で、工業化以前と比べ、地球上の二酸化炭素濃度は40%増加しました。
今後もし対策をしないでこのまま生活し続けていたら、世界平均気温は2.6℃~4.8℃上昇
してしまいます。・・・・・(後略)
児童K
今、地球は、温暖化が進んでいます。
過去80万年間のCO2濃度は、180ppmから280ppmの間で、10万年ほどかけて、上
がったり、下がったりしていました。しかし、工業が発展しはじめた1800年ごろから増加し始
め、200年間で、100ppmくらい上がりました。5万年間もかけて上がる数が、200年ほど
で上がってしまったのです。200年で、390ppmになってしまいました。
また、世界の平均気温は、130年間で、0.85℃上昇していて、最近30年の各10年間は、
1850年から1980年までの各10年間よりも高温でありつづけました。
21世紀末には、気温が最大で4.8℃、もし最大の対策をとったときでも、0.3℃上昇してしま
います。・・・・・(後略)
児童S
今、地球は温暖化で危機的状きょうに置かれています。1800年ごろの産業革命から2012
年までに、世界の平均気温は0.85℃上昇しました。このまま何も対策をとらないと21世紀
末までに、最高で4.8℃上昇し、最高の努力をしたとしても0.3℃上昇します。このような温暖
化の原因は二酸化炭素の大気中の濃度が増えたことにあります。大気中の二酸化炭素の
温室効果ガスの濃度は、過去80万年間に前例のない水準に増加しています。その主な原
因の一つは、工業化から大量に化石燃料が使われるようになったことです。・・・・・(後略)
児童H
今地球は、人類史上初めてのじょうきょうにおかれています。なにも対策をとらなかった場
合、将来の世界平均気温は21世紀末までに最大4.8℃も上昇します。
このようなげんしょうの要因は大気中の二酸化炭素が増えたことです。産業化が進むにつ
れ、化石燃料からの排出や正味の土地利用変化により、温暖化が進んできました。石油、
石炭、天然ガスからの二酸化炭素の排出が続きました。そして、土地利用で森林が減るよう
になるということもあり、二酸化炭素をへらすことがむ ずかしくなってきています。そのた
め、工業化以前より40%も二酸化炭素が増えました。昔は気温じょうしょうが起こり二酸化
炭素が増えましたが、今は二酸化炭素によって気温がじょうしょうするということになりまし
た。・・・・・(後略)
子ども達の感想
4週目、「論文」を書き上げた子ども達に感想も書いてもらった。
これだけの課題を課したその結果を知りたかった。
彼らがどのように学んだことを受け止めてくれたか、そこから、私自身が学びたかった。
I君は、箇条書きでこんなふうに書いてくれた。
*将来考えるのでは、おそいということが分かった。
*自分には関係ないとは言えないことが分かった。
*日本には少ないが、世界の各地でかなりの被害がでていることが分かった。
凄い!学んだ知識を「知識」だけに留めず、自らの生きる態度として受け止めている。
U君はこう書いた。
今世界がこのまま何も対策をとらないと地球は大変なことになると分かった。なので、世界の
人に、温暖化の対策を最大にまでしないと大変なことになると分かってほしい。
S君もこう書いた。
今回の学習で、温暖化による、海洋の酸性化、極端現象の発生、北極域の危機等の影響を
知れました。このままだと、地球は、今よりかなり変化することを、多くの人々に伝えて、世界
各国で多くの取り組みが開始されたらいいとぼくは思います。
U君もI君も、これまでは知らなかった地球の現実に気持ちを揺さぶられたのだと思う。
だから、二人とも、「世界の人に」「多くの人々に」、「分かってほしい」「伝えたい」という思いでいる。
彼らの生きる21世紀は、地球にとっても大きな曲がり角である。
人類は、果たして地球との共生を実現してゆけるのか?
それとも、人類の身勝手さで地球の歴史を大きく捻じ曲げてしまうのか?
私にできることは僅かだが、その「僅か」を積み重ねていきたい。
子ども達が、科学の力で、その将来を見定められるように、支えていきたいと思う。
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