フランス外人部隊の現状と歴史を訓練、装備、主要な参加作戦から概観した最も新しい邦訳入門書。著者はイギリス軍の3軍統合指揮幕僚学校の講師である。(古是三春、ビトウマモル『フランス外人部隊のすべて』p.338)
今日紹介する『史上最強の勇士たち フランス外人部隊』を参考文献の一つに活用している本での紹介文です。2008年に翻訳・出版されたものではありますが、実際に読めばわかる通り、現時点でもおそらく最も質の高い本とみてよいです。強いてあげるならコラムの掲載ページが本文内容と前後していて若干読みにくかったところくらいでしょうか。それでも各章はとても充実しています。
個人的に気になったのは、ひとつながりのはずの外人部隊の歴史のうち最新のものを第1章に、それ以前を第5章に分けているところでした。おそらくそれ以前と以後の部隊の性格の違いを考慮してのものでしょう。
思えば、近代フランスの歴史は激動そのものでした。革命、外征、本国の敗戦と占領……スペイン史を学んだ人間から見ると大国の地位を保てているのが不思議なくらいですが、その最前線で命を賭して戦ってきたのが外人部隊でした。そしてその主任務は海外植民地獲得と維持のための外征でした。これが大きく変わったのが拠点としてきたアルジェリアの独立でした。1961年の外人部隊の一部のクーデタ関与はこの世界的に特異な部隊全体の解体につながってもおかしくない不祥事でした。それでも時のド・ゴール政府は残す決断をしたのです。「世界中の危機に迅速に対応するフランスの戦力」(p.252)として再編したうえで。
ロシアや中国といった大国が久元喜造のような振る舞いをする今現在では少しかすんでいる気配はありますが、第1章で詳しく語られるフランス外人部隊の諸活動こそ、現代世界の平和維持に欠かせないものです。アルジェリア独立に伴う外人部隊の撤退は、現代の外人部隊の新たな方向に向かう契機となった出来事として注目する必要があります。
長い歴史の中で特に活躍した人物に焦点を当てたり、軍歌やケピ帽といった風習を細かく描写したりと真に迫る本書、フランス外人部隊をより深く知る上でも欠かせないでしょう。
Le Boudin (en francés: La morcilla) es la canción de marcha oficial de la Legión Extranjera Francesa.
(ル・ブダン(フランス語でブラッドソーセージ)はフランス外人部隊の公式行進曲である。)
『史上最強の勇士たち フランス外人部隊』
デイヴィッド・ジョーダン 大槻敦子[訳]
原書房
高さ:18.8cm 幅:13.2cm(カバー参考)
厚さ:2cm
重さ:291g
ページ数:270
本文の文字の大きさ:3mm