今日は『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』を紹介します。
これはラーサロ(ラサリーリョはいわば愛称のようなものです)が今仕えている主人に向かって己の身の上話をするという設定で書かれているのですが、実は作者が今に至っても不明です。しかし、この小説は16世紀(初版が何年に出たかも不明)に「ひとたび世に現われると」(p.119、解説)大ヒットし、“ピカレスク”(悪者小説)というジャンルをも生み出すのです。
さて、そんなエポックメイキングな小説ですが、全体の構成バランスがとにかく悪い(笑)。第三話は約40ページにわたりながら、次の第四話と第六話が2ページだけって一体?
「このことばかりでなく、お話はいたしませんが、そのほか些細なことで、わたくしはこの修道僧のもとを出てしまったのでございます。」(p.96)
いや、「そのほか」って何? 他の話じゃどうでもいいこともあらいざらい話してたのに何でここじゃ省くの? 気になるよ(笑)。
その気になる中身ですが、仕えた主人がそろいもそろってひどい連中ばかりで、仕えるラーサロは餓死しそうな状態にすら置かれます。これに対抗するべく、ラーサロもひどい手段で対抗するわけです(笑)。なんというか、当時の世相から察するに実在してそうなのが怖い(笑)。
短い話ですのですぐに読めますし、翻訳も古いながらちゃんと読めます。というより、描写そのものが派手に修飾してあるので、奇をてらった訳でなくても笑えるんですよ。
La literatura es un espejo de la sociedad de entonces.
(文学はその時代の社会を映す鏡である。)
『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』
(作者不明) 会田由訳
岩波文庫
高さ:14.8cm 幅:10.8cm(カバー参考)
厚さ:0.6cm
重さ:79g
ページ数:125
本文の文字の大きさ:2mm
追記:2012年8月1日に記事の修正。