ああああ、またぽちっとな。実は、天文の世界には大体3つの派閥

がある。一つは最大派閥の「天体写真派」。この方々は、とにかく天体

写真を撮ることに血道を上げる。人数がそれほど多いとは思わないのだ

が、天体撮影機材がものすごく高額で、それを惜しげもなく買いまくる

ので、「天文界は我々のおかげで成り立っている。」と思っている節が

ある。また、昨今の撮影は大量の電気が必要になるため、彼らは山の

静けさをぶち破るおきて破りの「発電機」を他人の目を全く気にせず

に使いまくっていた時期もあった。(最近、高性能リチウムバッテリー

の普及が進み、さすがに発電機の使用は少なくなった。)

 

第二の派閥は「観望派」。生の星の光を見ることを最上の喜びとする

人種。ちなみに私はここ。山で酒を飲みながら望遠鏡や双眼鏡で

黙々と星を見ている奴らがいたら、間違いなくこの連中。

もし、途中で曇ったりしたら、そのままみんなで宴会に突入して

しまう特殊な習性がある。

 

第三の派閥は「自作派」。天文機材を作りまくっているうちに

いつのまにか、作ることが目的になってしまった人々。ちなみに

私はここにも片足を突っ込んでいる。(いや、両足かも・・・)

 

さて、第二派閥にいる私にとって、天体写真派は奇妙な存在だ。

「なんで満天の星空で、星も見ずに写真だけ撮っているんだ!」

で、私の望遠鏡はみんな、ほぼ「見る」だけに特化したものだ。

「見る」ことに関しては、口径も、精度も、そこらの公共天文台

にそうそう引けは取らない。いや、下手をすると「見え味」に

関しては凌ぐことだってあった。そして、いままでそれで充分満足

していたのだ。しかし・・・・ここでブログなどを書くように

なって、「じゃあ、塾長が見てきた銀河って、どんなの?」と言わ

れるようになってきた。う~ん。天体写真を撮る、というのは

実はかなりハードルが高く、できないことはないが、相当に

面倒くさく、時間を食うものだ。だって、星は常に動いている

からね。すぐにブレてしまうのだ。つまり、できるだけ正確に

その星の動きに合わせて撮影機材を動かさなければならない。

通常は「モータードライブ」という装置を使うのだが、本当に

些細なことで追尾に失敗したりするのだ。

はっきり言って、そんなことをちまちまやっている時間が

あったら少しでも生の星の光を自分自身の目で見ていたい。

 

そこで、とんでもない製品が発売されたのだ。もうね、本当に

とんでもない。ありとあらゆることが自動化されている。

その名も「DWARF3(ドワーフ3)」

で、1も2もなく衝動的にぽちっとしてしまった。

さっそく塾の屋上で試写。

もうね、今までの苦労はなんだったの?の世界。目標天体を入力すると、内蔵GPSで

自分の立ち位置を認識した後、しばらく天を眺めて、星々の位置関係から、目標天体

の方向を計算、勝手にそちらにレンズを向け、撮影開始。何十、何百と撮影を繰り返

し、最適な写真をスタック(重ね撮り、だね)し、撮影終了。クリック一つでスマホ

に転送してくれる。以下は、光害のメッカ、柏の屋上で、たかだか10分程度の露出で

撮影した、ものである。M42 オリオン大星雲

 これは「燃木星雲」と「馬頭星雲」 はっきり言って、柏でこれが撮れるとは

思わなかったよ。おじさんは。

予約撮影機能も充実しており「〇〇星雲、○○星団、○○銀河・・・・・」と入力

すると、望遠鏡で星を観望三昧しているうちに全部勝手に撮影をやってくれている。

つまり、これは、「今日、僕がどんな星々を見たか」の、記録写真機だ。僕はどう

転んでも「生の星の光を自分の目で取り込む生粋の観望派」なことに変わりはない。

ただ、これからの星見行の写真には、星雲星団の写真も増えますぜ。「こんなん、

生で見てきました~」的なね。