いやね、もう、夏期講習真っ盛り、朝から晩まで授業、夜中は準備で死にそうです。

で、夏期講習前に、平日、塾開始前に、映画などを見ておこうと・・・・・

 

天文屋がこの夏に見なければならない映画と言ったらこれ!

「この夏の星を見る」

もう、ほとんど上映していないようで、柏でもやっていなくて、しかたなく、

電車に乗って、「流山おおたかの森」までいっちゃいました。

映画館は、そこそこの賑わい。だけど、客層がなんだか、おっちゃん、おばちゃん

ばかりだったのはなぜなんだろう。(私も含めてさー)

おそらく、この人たちもみんな、高校時代は天文部だったのかもしれないなあ。

 

で、映画館で、ビール飲み飲み拝見させていただきましたよ。

いや~、オタク色がかなり出ている。準主人公が作っている天体望遠鏡なんて

「ナスミス天体望遠鏡」だよ。これ、そうとうレアで、知っている人なんて

ほとんどいないと思うよね。普通、望遠鏡は見るところが上下左右に動くので

見る人は天体の位置に応じて体を動かさなければならない。これがけっこう

つらい。アクロバティックな姿勢を続けるのは、とくに高齢者や身障者には

厳しいのだ。で、このナスミス天体望遠鏡は、複雑な光路を介することで、

見る位置を一定にした、なかなか画期的な望遠鏡だったのだ。だから、車いす

の方も、天体観望を楽しむことができる。まさか、しょっぱから、この望遠鏡を

作ろうとする青年が出てくるとは恐れ入った。ただし、この光学系は、

デメリットとしてあまりに複雑な光学系を配することにより、高精度のもの

を作ることは大変に難しくなる。(つまり素人さんが作りと見え味が悪い

望遠鏡になりやすい。)また、光路をなんども折り返さなければならない

ため、光路長がながくなる。ということは焦点距離も長くなるので低倍率

が出しにくくなる。

まあ、これらも相当にオタッキーな話で、「身障者のための望遠鏡を作る」

という崇高な目的のためには、無視してもいいことなのかもしれない。

実際、この話のもととなった実話があるのだが、最初生徒たちが作った

ナスミス望遠鏡は、よく見えなかったために、光学系だけは、超有名

望遠鏡制作会社に委託した、という話が残っている・・・・

 

しかし、そのほかは、ものすごく清く正しく美しい、青春ド直球映画なの

だった。

私はビールを飲みながら思った。私が高校の時に一時入部していた天文部

(わが校では「地学部」といった。)とは、まさに対極の世界だ、と。

 

私が天文部を3か月で辞めたわけ。

あまりに、あまりに暗く、生徒たちもブラッキーであったから。

1年の夏合宿。霧降高原へ行ったのだが、そこで事件は起こった。

テントを張らなければならなかったのだが、現場には、なぜか、

丸くえぐられたような土地があり、底はフラットになっていた。

中央には、島のようなものがあって、誰かが言った。

「なんだこれ?まるで、ここにテントを張ってくれ!とでも言い

たげな場所だな。そう、これはテントサイトそのものだ!」

私は、先輩たちに他の仕事を任され、帰ってきたら、まさにテントサイトに

テントは張り終わっていた。

で、私が早速、自分の荷物を入れようとすると、テントを立てた連中が

騒ぎ出した。「ここは狭いよ!ほかのテントに行けよ!」

この二つのテント、両方の奴らが同じ反応を示し、私は居場所を失った。

断じていうが、私は、別に臭くもないし、いじめられていたわけでも

嫌われていたわけでもない。この部活の同窓、ほぼ全員が、ウルトラ

自己中で、自分以外の人間のことを気遣う、という気持ちが皆無だった

のだ。結局、私は、使うはずのなかったぼろいテントを張るしかなく、

こいつらとはちょっと離れた場所に陣取った。すると、こいつらは

自分たちの荷物を持ってきて「一人だろ?スペースに余裕があるんだ

ろうから、俺たちの荷物を入れておいてくれよ!」とどんどん荷物

を積んでいった。その上、「こっちのテントはなんだか傾くから、

お前のカメラの三脚貸してくれ。支えに使うから。」と私のカメラ

三脚を持って行ってしまった。

 

さて、夜。ものすごい雨音。もうね、集中豪雨みたいなの。

賢明なる読者さんはお判りでしょうが、あの丸いテントサイト、

あれって、「枯池」だったんだね。豪雨で、本来の池の姿に戻って、

テントはすべて水没。助かったのは僕のテントだけ。

あの時は「ああ、神様って本当にいるんだな。」と思ったね。

けど、翌朝、「池」の底を覗いたら・・・私から持って行った

カメラ三脚だけが回収されずに水没していた・・・・・

 

こいつらとは、これから絶対にうまくやっていけない、と

確信して、合宿途中で「具合が悪くなった」と帰宅した。

2学期が始まり、すぐに退部届を提出したのは言うまでもない。

 

その後、私は写真部と生物部に入って、面白おかしく過ごさせて

もらった。写真部の方は部長をやっていたし、大学は生物学科

に進んだから、本当に楽しかったんだろうなあ。写真部員とも

生物部員とも、いまでも付き合いは続いているしね。

「星だけは一人で見るもの」 こう強く思うようになったきっかけ

の事件だったね。だけど、風の便りに聞くと、結局、あの地学部

の同級生のなかでも、今でも星を見ているのは「私一人」であるらしい・・・・

 

まあ、だから、この青春天文部映画は、私には、異世界物のように

思われてしまうのだ。もし、本当に、こんな部だったら・・・・・

私の人生、大きく変わったかもしれないなあ。大学も生物学科

ではなく、地学学科に行っていたかも・・・・

 

ただ、映画の最後の最後に、この完成したナスミス望遠鏡で、車いすの

お姉さんが、高速で動く「ISS(国際宇宙ステーション)」を一発で

導入していたけど、こんなことが可能なのか?先に書いたけど、この

ナスミスは「低倍率」が出しづらい望遠鏡なのだ。つまり視野が思いっきり

狭い。これはどんな魔法だ?とか、思ってしまったのはやっぱり

俺がオタッキーな病気にかかっているからだろうなあ。

けど、来世は、こんな楽しい天文部に入って青春したいなあ。

 

おまけ

時は流れて、修学旅行の時、たまたま旅館の食事の席が、この時の

地学部員といっしょになった。食事はすき焼きだった。

私はあの霧降高原のいやな思い出がよみがえって不安になったのだが

まあ、あれから時間もたっているから、きっと大人になっているよね、

と思うことにした。

ところが・・・・

彼は、食事の前に、おもむろに自分の箸を手に取り、ベロベロと、

舐め始めたのだ。そして、自分のつばをたっぷり付けた箸を、

あろうことか、まだ火が通っていないすき焼きの牛肉に

「これ俺の!これ俺の!」と言いながらつかみ始めたのだ。

ああ、牛肉の青田買い。

私はあまりの出来事にあっけに取られていたのだが、同席した

がたいのいいラグビー部員は、瞬間湯沸かし器のように、顔を

真っ赤にしてそいつの襟首をつかみながら

「お前は、お前は自己中心的すぎるんだよ!」と。

 

この時、「ああ、やっぱりみんな同じに思うのだなあ、早めに

部をやめてよかったなあ。」と思った次第です。おしまい。