前評判が異常に高かった「紫金山アトラス彗星」、とうとう最接近です。
かなり前から、「分裂してしまった。期待よりずっと暗い」と言われ続け、
天文マニアたちを絶望の底に叩き落しておりました。
ところが・・・・本当にごく最近、急に「増光」したと報じられ、再び
全国天文ファンは大喜びしたものでございます。
さて、そうなると、見て写真を撮ってこなければならないのは天文マニア
の性(さが)でございます。
で、天気が良さげなお休みの日曜日準備万端、出発したのでございます。
まず、腹が減っては戦ができぬ。途中でお蕎麦屋さんに。
本当なら、この後、温泉にはいって、まったりモードで天体観測なのですが、
今回は「夕方」にしか見えない!もう、少なくとも午後4時半には現地入りして
準備しておかねばなりません。あとはもう猛烈な勢いで現地に向かいました。
で、いつものように山頂の神社でお参り。「今回もよろしくお願いいたします!」
とお賽銭を入れて神頼み。さあ、現地到着。彗星迎撃完全装備。彗星自体かなり
大きなものだから、低倍率で明るい双眼鏡の方がいい。というわけで、いつもの
口径46センチ、全長2メートルもある巨大望遠鏡は持ってこず、機動性に優れた
10センチ双眼鏡をチョイス。後は撮影機材のみ。彗星一点突破機材です。
いえ、夕暮れ空は思った以上に明るくて、本来暗い彗星など最初は全くどこにあるか
わからなかったです。
これ見て、どこだかわかります?左側にあるのが金星。そして右にある、かろうじて
見えるのが彗星。いえ、恥ずかしながら私はこの時点ではわかりませんでした。
さて、空はだんだん暗くなり、やっと彗星がそのお姿をお見せになる時刻がやって
まいりました!より広角ですが、もうはっきり画面中央に見えるでしょう。
上記は広角レンズなので、準望遠レンズで撮り直し。これならわかるでしょう。
実際、驚くべきことに、空が暗くなってくると、双眼鏡を使わずとも、肉眼で
はっきり確認する事ができるではありませんか!こんなの27年前のヘールボップ
彗星以来でございます。ただ、残念ながらこの彗星はこの後太陽に付き従うように
地平線の彼方に消えていきました。また、これから日がたつにつれ、だんだん高度
は上がって見やすくはなりますが、それと反比例するように彗星本体は急激に暗く
なっていくのでございます。これらを考えると、この日曜日がこの日本では最高
最後のシチュエーションではなかったか、と思われるのです。それがこれだけ晴れ
たのは、もうね、「天の恵み」としかいいようがなく。この写真は生徒たちに
プリントしてあげようね。
しかし、この彗星は長周期彗星で、周期は8万年と言われている。
つまり前回接近したときは8万年前。その時は人類は我々ホモサピエンスだけ
ではなく、ネアンデルタール人もたくさんいたはずだ。(ネアンデルタール人
の絶滅は4万年前と言われている。)彼らは、やはり夜空にこの彗星を見上げた
のだろうか。そして次の8万年後、この彗星を見上げるのは、果たしてホモサピ
エンスなのだろうか。それとも我々とは異なる進化を遂げた人類なのだろうか・・・
誰であったとしても、この星々を見て「美しさ」や「神秘」を感じるような方々で
あってほしいなあ。
彗星が下の雲に隠れたのが午後6時半ごろ。まるで「彗星劇場」の幕が下りた感じ。
で、普通の人は帰るのだろうけど、興奮冷めやらぬ私はさっそく。
このチゲ鍋セットにでっかい「タラ」を入れる!
その上から、「黒舞茸」なんかも。
もう、盛沢山になったけど、追加で豚肉なんかも足し入れて、と。そして
肝心な。もうね、今日はここに泊まりますよ。彗星の写真も無事撮れたし
乾杯乾杯、また乾杯。一人宴会ここに極まれり!
具材を全部食べたら、やっぱりしめはうどんですね。
で、この日は、月が大きかったので、星雲星団には向かなかったのですが、
「そうだ!車にマクストフ望遠鏡も積んでいた!これは高倍率にも適している
から、月や土星、木星も楽しもう!」と酔った頭で月惑星を観望しまくり。
そのうち、邪魔な月も沈んで、「そうだ、大型双眼鏡もあるなら、いつもの
ように星雲星団だ!」と大型双眼鏡を振り回し、酔っ払い天文屋に怖いもの
なし。ということで誰もいない夜の山は、静かに更けてい行くので御座いました。
(俺だけ一人うるさかった気もする・・・・)
さて、朝。まず、山頂で朝ごはん。というか、昨日来る途中でコンビニで買った
サンドイッチとパン。サンドイッチは我慢できなくて撮影前に半分食べてしもうた。
で、帰る途中温泉にはいって、と。
地元ではかなり有名なお蕎麦屋さんに入って、「海老天ざる蕎麦、大盛、クルミ
ダレ追加」という、ぜーたくな注文をして黙々と食べた。
「祝いだ!祝いだ!最高だぁ!」と、昨夜の余韻を引きずって、こういう時には
財布のひもが緩くなる悲しい性(さが)。
ああ、27年も見られなかった「肉眼彗星」を見られて、撮影出来て良かった!
非常に満足な一日でございました。