久しぶりに生徒に「実験」めいたものを・・・・・

といっても、ちょっと手抜きで、面白い錯覚をプロジェクターで見せまくりました。

たとえばこれ。赤い台形は、実は台形ではなく、正方形。

これ、じつは、左のテーブルも右のテーブルも「同じ形」なのです。ウソみたいでしょ?

右のテーブルが奥行き方向に置いてあるため、脳が勝手に補正をかけているのです。

これは、赤い点は、実は、三角形の上の頂点と底辺から等距離、つまり真ん中に

あるはずなのです。けど、脳が勝手に補正して少し上にあるように見えますよね。

これは、顔を近づけたり遠ざけたりしてみると、中心部の明るさがかなり変わって

見えるはず。(これ、国旗ではないので、怒りのメールとかよこさないでね。)

これなんかは、赤い直線はみんな平行なんだけど、そう見えないでしょ。

で、こんなのをたくさん見せたけど、やっぱりこれだけじゃ面白くないから、紙細工を

作って子供たちに見せました。「振り向きドラゴン」と言って紙型がダウンロード

できます。

 

あまりに面白いから、もう一本。人間の眼は、両眼で見ることで左右からの情報に微妙な

「ずれ」が生じる。この「ずれ」を視差というのだけど、これが「立体視」を可能にしている

主な要因である。つまり近くのものであれば「視差」は大きくなり、遠くのものはあ「視差」

が小さくなることを利用して、脳内プログラムが遠近感を通じ、立体視の処理をしてくれて

いるのだ。しかし、遠近感は「視差」だけでとらえられているのか、というとそうでもない。

眼がピントを合わせる時のレンズの収縮をしている毛様体筋の情報も入っている。

「これだけ毛様体筋を使ってレンズの厚さを変えて焦点調節をしたのだから、距離は

このくらいだろう。」という感じである。また遠くのものは小さく、近くのものは大きく見える、

という蓄積された経験をもとにした「心理的情報」も加味されている。

例えば、下の絵を見ると、右のケーキのほうが大きく見える。しかし、本当は同じ大きさだ。

これは脳が、今までの経験上、「遠い所にあると、小さく見える」というデータをもとに、

「実際は大きいはず」という「補正」を行っているのだ。

「視差」「毛様体筋からのピント情報」「経験値」これらすべてが「脳内」で多角的に処理さ

れ、立体視を完成している。(おそらく、コントラスト強度等、他にもあると思うけど・・・・)

この高度なシステムをうまく「だます」のだ。この振り向きドラゴンは実は、顔部分が裏側

に折られている。両眼でみると、立体視最大の効果をもつ「視差」が情報として入ってくる

ので、脳がうまく騙せない。つまり「振り向いて」くれない。

しかし、片目でみると、「視差」の情報がなくなり、脳は他の情報で立体視処理をしなけれ

ばならなくなる。脳は極端に少なくなった情報で、なんとか、「経験則」から立体視を試み

るのだ。

すると・・・・・ドラゴンもトラも見事に振り向いてくれるのだ。カメラで動画を撮ると、やはり

単眼であるので、「視差」情報が消える。するとこのように「振り向き」が強く感じられる

ようになる。脳がいかに通常、高度な処理をしているのか、また、その脳を騙す仕組みを

作れるのも、やはり「脳」なのだ、と考えると非常に面白い。

とにかく、これ、生徒たちは大変に喜んでくれて、ぼくもうれしかったです。