さて、カレーうどんを作って、特訓やって、みんな夕方5時前には帰った。
さあ、俺の時間だ!
ちょうど月回りは新月近く。天気も良さそうだ。これで星屋が山に行かない
わけがない!
出発が大幅に遅れたので、山についたのは夜9時近く。
ところが・・・・・雪が降っていたのだ。車から望遠鏡を出すわけも行かず、
仕方なく、山小屋に避難。壁にびっしり小さな文字が書いてあるのは、
悪霊が小屋に入ってこないように書かれている般若心経である。
おおうそぽん。この山に植樹した人々の名前です。とりあえず、ここで鍋を
作って夕飯を・・・・
とにかく、寒い。これほど寒いのは久しぶりである。この寒さでアツアツの
鍋はしみる。
ここで恐るべきことが発覚。どんぶりを忘れた・・・・・
しかたないので、ビール用のマグカップによそう。ビールはラッパ飲み。
ううううう。
食事も終わって、山小屋の外に出てみると・・・・雪が小降りになっている。
これほど暴力的な寒さは、人から体力・気力を奪っていく。今から100キロ
以上の望遠鏡を組み立てるのはかなりつらい・・・・・とは思ったが、「何のために
ここまで来たのだ!」と気力を奮い立たせ、望遠鏡の組み立てを開始する。
しかし・・・・シベリア抑留の人たちは、毎日がこんな感じだったのだろうな。
それも、大した食糧も支給されずに。それを思うと、好きな星見のために
この寒さの中に居るのは、極楽と言えるだろうね。いつの間にか、外は一面
雪景色だ。
組み立て終わると・・・・・再び雪が降り始める。空には星が見えているのに。
たぶん、遥か日本海側から、強風で雪片が運ばれてきているのだ。
それにしても量が半端ない。無理して星を望遠鏡で覗いてみると・・・・・・
ぜんぜんよく見えない。上空数千メートルまで雪吹雪がまっているのだろう。
星の光が分厚い吹雪の層の中を通過しなければならないので、低倍率の肉眼
なら星がちゃんと見えても望遠鏡の高倍率には耐えられないのだろう。
星像がぐちゃぐちゃになってしまうのだ。
で、午前1時までまった。神のご加護か、雪はやっとやんだ。
さあ、今度こそ本当に俺の時間。これから2時間ほど、一心不乱に星を見まくった。
メジャー処で恐縮だが、M81,82,51,65,66,104,NGC4565等、
次々に導入して行く。特に4565は視野一杯に広がる「真一文字」の姿は
中心をカミソリのように横切る「暗黒帯」とともに目に焼き付いております。
僕が撮った写真ではないけど、こんな感じで見えます。
M81,82
それぞれが数千億の恒星(太陽)を従える銀河です。
右のM81星雲が巨大で綺麗な渦を巻いているのがわかるでしょう。
これが左のM82に重力的な影響を与えて形を不規則にさせています。
M51 子持ち星雲。僕の望遠鏡で、これよりちょっと薄くしたように見えます。
お互いの重力で今まさに合体しつつある銀河です。
M65,M66, NGC3628
しし座の後ろ足の付け根くらいにある3連銀河。 ひとつの視野に3つの
銀河宇宙が望めます。一つ一つの銀河に数千億の恒星(太陽)があって、
それにたぶんいくつもの地球のような惑星が回っています。きっと無数の
生命が宿っているのは間違いないでしょう。これを神の視座と言わずして
何と言うのか。髭の生えた変な宇宙人もきっと向こうから望遠鏡でこちらの
銀河を見ているかも・・・・・・
NGC4565
銀河を真横から見たものです。僕の望遠鏡だと、まさにこんな感じに
見えます。中心の黒い亀裂のようなものは「暗黒帯」です。
で、3時過ぎごろ、再び小雪が降り始め、ざっと防雪のカバーを望遠鏡
にかけ眠ることに・・・・あまりに寒いので雪が解けて望遠鏡が濡れる、
という事はなさそう。
ある程度、寒い事は予測していたので、今まで使用したことがなかった
「超耐寒仕様寝袋」を用意。マイナス30度まで耐えられるという優れもの。
今回は、本当に身の危険を感じるほどの寒さだったけど、この寝袋に入ると
ぬっくぬくでございました。いきなり地獄から極楽へ。先ほどまでの極寒の
中で見た星々を脳裏に反芻しながら眠りについたのでございます。
続く