さて、「月食ってなんで起こるの?」と、生徒から質問が・・・・

というわけで、ちょっと解説。

まず、普通の月の満ち欠けと何が違うのか?

 

月の満ち欠けは時間を何日もかけてゆっくり起こるけど、その

理由は「月は地球の周りを約27日ちょっとかけて回っているから」

でございます。この月の公転のため、太陽、月、地球の位置関係

が変わり、月の満ち欠けが起こります。太陽に面した月面が光輝き、

その反対が「欠け」て見えるのです。この関係を図にしてみました。

(これ、僕がワードで一生懸命作ったのですよ。)

地球の北極方向上空から見た感じて描いております。(正確には地球の

自転軸と月の公転面はこれほど垂直ではありませんが・・・・)

この図を見れば、例えば「月が左端の位置に来たら、太陽をバックに背負う

位置だから『新月』。地球の自転位置から正午に南中する。」

「月が上に位置に来たら、『下弦』で、地球の自転位置から午前6時に南中」

「月が右端の位置に来たら『満月』で、地球の自転位置から真夜中に南中」

「月が下の位置に来たら、『上弦』で、地球の自転位置から午後6時に南中」

という風に、一目でわかるように作ってあります。

「やせ下弦」とか「太っちょ上弦」とか言うのは僕が勝手に作った

造語ですから気にしないでください。

 

さて、ここでこんな疑問が生じるはず。「満月って、地球の裏側にある

のに、なんで太陽の光が正面からあたるの?地球の影になるんじゃない?」

もっともな疑問でございます。たぶん、生徒たちが一番混乱する場所でしょう。

 

では、下図を見てください。実は、地球と月はこれほど離れています。

大きさと距離の関係も大まかですが合わせました。月までの距離は、

だいたい地球の直径の30倍くらいです。え?太陽はどこかって?

実は、この地球の遥か左にあります。地球と月の距離の400倍も

遠いので、とても描き切れませんでした・・・・・・・・

さて、ここまで離れていると、月が地球の影になるのが、かなり難しい事

がわかるでしょう。地球を1センチのパチンコ玉にしたら、太陽までは120m

くらいはなれていることになるのですから。(太陽の大きさは1mくらいですが

それでも120m離れると、相当小さく見えるでしょう。)そして月までの距離が

30センチくらいです。そして月の大きさが3mmほど。目の前の1mの的に矢を

当てるのは簡単ですが、120m離れていると、これは相当に難しい。

太陽を地球が完全に隠して、その地球の影に月を落とす、というのはこれほど

大変なことなのです。ほぼ、完全に太陽、地球、月が一直線上にならなければ

ならないのです。太陽の周りを地球が回る公転面と月が地球を回る公転面が、

微妙にずれて同じ平面にはないので、「完全一直線」なんて、めったにないこと

なのです。でも、この「めったにない」というのが曲者。

つまり、たまにはあるのです。これが「月食」。太陽、地球、月と並んだ満月時、

たまたま数パーセントの確率で完全一直線になった時、月食が起きます。

ちょっとかすめた時が「部分月食」ですね。

昨日撮った月食の写真で検証してみましょう。この欠けている部分。これは通常の

「満ち欠け」とは違い、地球の「影」なのです。

つまり、こんな感じ。この影の丸み、は、地球の丸み、なんですね。

最初の図にある、満ち欠けの「太陽の反対側が欠けて見える」のとは、まったく

原理が違う事がわかりますね。「月が、公転により、自ら地球の影の中を通過し

ていった」のが理解していただけると思います。

位置関係で、太陽、月、地球の一直線ラインが完成したときが

「日食」です。今度は太陽が月に隠される番なわけです。

つまり「新月」の時しか、日食は起きないのです。

 

さて、次に、皆既月食中に「赤い月」になるわけ。

地球には空気という大気があります。太陽の光はいろんな色が

混じったミックス光で白く見えますが、空気はこのうち青色の光

を散乱、吸収する性質があります。これが空が青い理由なのですが、

空気中を太陽光が長距離進むと、青が抜け、透過性の優れた

赤い光だけが残るようになります。ここら辺、「机の上の夕焼」を参照してください。

赤い光は空気層によって屈折し、図のような光路をたどり、月面を

赤く染めるのです。

今回は、珍しく、ちょっと真面目な授業。月食の時、「自分の足下、

地球の裏側遥か彼方に太陽があって、その光が月を照らし、満月に

している。今、月、地球、太陽が一直線に直列し、月がわが地球の影

に入り始めたのだ・・・・・・」

こんなシミュレーションを頭の中でできるようになると、自分たちが

広大な宇宙の運動の中で生きている事、そしてその広大な運動すら

この小さな頭の中で解明できうる人間の偉大さがわかるようになります。

理科とは、そういう学問なのです。