「こぶし」
こぶしの木にも青い実がいっぱいついてる。
そういえば、早春、まっしろい上品なこぶしの花がいっぱい
咲いてたっけ。
さて、今日の寝床は、と。もう30キロチャリこいで来ているの
でちょっと疲労が・・・その上、おなかいっぱいだし。
小雨が降っているので、屋根付きのところがいいなぁ。
で、この東屋。
さっそく、寝床作り。(といっても蚊取り線香焚いて、枕だす
だけだけど・・・・・)で、例によって15分ほど、爆睡。
起きた時の「リフレッシュ感」といったらないね。
さて、帰りの時間。この道をどこまでもまっすぐだ。
西空で雲が切れかかっている。このまま晴れそうだね。
とちゅう、キノコ。これはたぶん芝生なんかに良く生える
「キコガサタケ」。特徴的だよなぁ。みたまんま華奢で、
数日持たない。毒はないようだけど、食べる人もいないようです。
カサの大きさは10円玉くらいかなぁ。
さあ、天気も回復したし、ゴールデンタイムの始まり。空の色が刻々と
変わり始める。
この時間が一日で一番好きだね。
空は茜色からパープルへ。この色の変化は、たぶん、どんな
芸術家にも描きあらわせないもののひとつだろうなぁ。
で、事件は起こったのだった・・・・・
夕景を眺めながら、鼻歌まじりでチャリをちんたらこいでいると
前方200mくらい先に女の人発見!彼女は自転車から降りた状態で
やっぱり沈む夕日を眺めているぞ。うん♪なんか絵になりそうな
感じ。私はそのままチャリをこぎ続けたのであった。
前方100mくらいに接近!年のころ40歳くらいかな?けど、そのお姿、
なかなかスマートでよさげな感じ♪
前方50mくらいに接近。うんうん、なかなか美形そうだね。お美しい女性
が一人夕景の中にたたずんでいる姿は、なんか詩的でいいね。♪
前方20mくらいに接近。あ、あれ?なんか、空気が、彼女の周りの
空気がよどんでいるぞ。ミノフスキー粒子でも出しているのか?
前方10mくらいに接近。自慢の妖怪アンテナがびんびん反応し始める。
(最近、髪の毛が薄くなってきたのでこれは冗談。だけど異様さだけははっきり
わかった。)
前方5m。ひ、引き返そう!と思ったが、もう自転車は止まらない。
目、目に異様な光をたたえている!やばいやばいやばいやばい。
前方1m。ええ、たしかに、彼女は私と目が合って「ニタリ」と笑ったのですよ。
前方0m。すれ違いざま、彼女は口をおもむろに開けた。
「ひっ!」
なんだなんだ、口から何かを発射するのか!それとも、俺に襲い掛かって
食べようとでもするのか、と思った刹那、彼女は
「人殺しぃ~!」
と信じられない大声を上げたのだった。もしこの時、「この変態!」とか
言われたのなら「はいはい、変態ですか、そーですか。」とか「あれ?チャック
開いてました?」とか、冗談のひとつも言えたろうが、さすがに「人殺し」には、
返答のしようがない。私はとにかくそのままチャリで走った。走りながら、考えた。
「いや、『人を食った奴』と言われたことはあるが、断じて人を殺したことは
ないぞ。いやそれどころか、サイクリング中、路上でのたうつ干からびかかった
ミミズを発見するたびに、草むらに戻して「ミミズ助け」をしてやっているくらいだ。
これは何かの間違いだ。きっと彼女は「人殺しぃ~」と言ったのではなく、
「人恋しぃ~」とでも言ったに違いない。寂しさからの心の発露だ、きっと。」
一キロくらい走った地点で、私はチャリを止めた。ああ、人恋しいかわいそうな
女性に悪いことをしたな、と。そして後ろを振り返った。すると・・・・遥か遠方から、
何かが猛スピードで接近してくるのが見えた。常に自然観察のために双眼鏡
を首からかけている私は、直ぐにその接近物体に双眼鏡を向けたのであった。
そして・・・・双眼鏡の視野の中には、恐ろしい光景が広がっていた。
さっきの女性が、髪ふりみだし、悪鬼の形相をしながら、信じられないスピード
でこちらにチャリで向かってくる、それはとてもシュールな光景だった。
私は、それから、一度も後ろを振り向かず、マイカーまでの10キロ、全速力
チャリをこいだ。半べそをかいていたような気もする。車についてチャリをつんで、
即出発。バックミラーを何度も確認しながらの帰路であった。生きた心地がし
なかった。今日のことは夢にも見そう、いや、きっと見るだろう。
こんな恐ろしい体験をしたのは、筑波で竜巻に追っかけられた時以来だ。
あの生死にかかわる状態でも竜巻の写真はしっかり撮ったのに、今回は、
まったく、それどころではなかったなぁ。
今日は、良い一日・・・・とはとても言えない・・・・・