とあるところから、ゲリラ豪雨のコラムを依頼されました
(ジジコ http://jijico.mbp-japan.com/2014/07/13/articles10956.html )

ただ、図とか使えなかったので、ここで図解までしますね。

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ゲリラ豪雨」という言葉を最近ニュースでよく聞きます。
では、「ゲリラ豪雨」とはいったい何でしょう?今までよく使ってきた
普通の「集中豪雨」と一体何が違うのでしょうか?実は、「ゲリラ豪雨」
と言う言葉は気象の正式な名称ではありません。
最近、今までの「集中豪雨」とは違う、予測がつきにくい、突発的に起こる
「集中豪雨」が増えてきました。「どこでいつ襲ってくるか予測不能」と
いうことで「ゲリラ豪雨」と呼ばれるようになったようです。

では、どうして予測が難しいのでしょう。今回は「ゲリラ豪雨」の
発生のメカニズムを解説していきます。

まずその前に、「集中豪雨」のメカニズムをお話しします。
「集中豪雨」は一般的に「積乱雲」という雲が猛烈に発達したり、連続して
発生することによってよってもたらされます。
積乱雲とは、よく夏の暑い日にもくもくと上に向かって伸びる「入道雲」の事です。

積乱雲
             (撮影地 柏の手賀沼)

これは、湿った暖かい空気が、なんらかの理由で急激に上昇することに

より、天空で急冷されて水蒸気が凝結してできる雲です。垂直方向に

発達し、直下に雷や猛烈な雨を降らせたりします。

さて、暖かい空気は軽いので、ただでさえ上昇気流となりやすいのですが、

自然界には、この上昇を加速させ、積乱雲を急成長させる要因がいくつかあります。

たとえば、山に湿った暖かい風があたると、山肌にそって上昇し、積乱雲になること

があります。また、寒冷前線が通過するとき、冷たい空気が暖かい湿った空気の下にもぐり

こみ、急激に持ち上げると、前線面に「積乱雲」が発生することはよくあることです。

その上、こういった前線がある時に、台風などの発生があると、その台風から暖かい

湿った空気が前線面にどんどん供給され、連続的に大量の積乱雲が発生し続け

たります。

台風は暖かい海から来るので、そこから供給される空気は

暖かく膨大な量の水分を含んでいるのです。まだまだ台風が遠いのに、とんでもない

集中豪雨が起こるのはこんな理由によるものなのです。

積乱雲を発生させる要因は他にもあります。

それは、上空の冷たい空気です。真夏を挟んで前後、日本上空では太平洋高気圧が

弱くなり、上空に大陸からの冷たい空気が入り込むことがあります。この時、地上に海からの

暖かい湿った空気が入り込んでいると・・・・非常に不安定な大気になります。

冷たく重い空気が上層、暖かい軽い空気が下層に来るわけですからね。

重い空気は下に落ちようとするし、軽い空気は上空に行こうとして「対流」が

はじまるのです。この対流の力が加担することで、上昇気流が加速し、積乱雲が発生します。

さて、以上の事が通常の「集中豪雨」の話です。これらの事は、地形や前線、台風の動きや

風の動き等で積乱雲の発生が予測されやすい。いわゆる「天気予報」の範疇のできごとなのです。最後の対流の力による積乱雲の発生による降雨は、あまりに狭い範囲のことなので、予測は

難しいのですが、規模が「にわか雨」程度の事なので問題にもならなかったのです。


では、いよいよ予測が難しい現代型の「集中豪雨」、「ゲリラ豪雨」のメカニズムについて

説明していきます。


現代、都市部では「ヒートアイランド」という現象が起こっています。人間活動が集中する

都市部で、高温化する現象です。アスファルトやコンクリートも蓄熱性が高く

林立する高層ビルも風を遮り放熱を妨げ、ヒートアイランドに一役買っています。

このヒートアイランド、実は都市部での「対流」の力を増加させるのです。対流は上層部の冷気

と下層部の暖気により起こりますが、この温度差が大きいほど、対流の力は大きく速くなります。

ヒートアイランドにより、地表の温度は高温化し、上空の冷気との温度差が極端に大きくなってしまったのです。

上昇気流はより急激になり、積乱雲は強大化し、今までは単なる「にわか雨」レベルだったのが、

「豪雨」になるようになってしまった。それも予測不能な「ゲリラ豪雨」に・・・・・

これが、都市部でよく「ゲリラ豪雨」が起こる理由です。もし、突然、空が雲に覆われ、真っ暗になり、急に冷たい風が吹いて来たら・・・・その風は対流のはじまりの上空からの下降気流です。すぐに建物の中に避難してくださいね。

ゲリラ豪雨直前の空
        (撮影地 柏市ポラリス屋上)