クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ 3分ポッキリ大進撃。 | 江戸の杓子丸

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「クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ 3分ポッキリ大進撃」

88分 日  2005年

監督 ムトウユージ

製作 和田泰 西口なおみ すぎやまあつお
原作 臼井儀人
脚本 ムトウユージ きむらひでふみ
音楽 若草恵 荒川敏行 澤口和彦 CHIKA
撮影 梅田俊之
出演 矢島晶子 ならはしみき 藤原啓治 こおろぎさとみ
    真柴摩利 村井国夫 玄田哲章 小桜エツ子 ほか



【完全ネタバレ】



「強い人は弱い人を助けてあげるものだからッ!」。☆☆☆★★


〔ストーリー〕
 野原家に突如現れた変身ヒーロー「ミライマン」は、「時空の乱れが原因で怪獣が次々に出現しており、3分後の未来へ行って怪獣を倒さないと危機が現実になってしまう」と語り、みさえを強制的に3分後の世界に連れて行ってしまう・・・。




劇場版映画13作目。
結構来たな、公開された劇場版はこれで半分くらい見たことになる。

ムトウユージ脚本・監督作品。
脚本はきむらひでふみと共著。


プロットがとても面白い。
現実に起こることを、3分後の未来に行くことで未然に防ぐという物語。

そういう物語は結構あることはある。
主人公だけ危機を察知し、現実に起こらないよう奔走する映画はあるけど、それだけではないのがこの映画のいい所。


しんちゃんが見ている夢を通して、冒頭にこれはどんな映画でありどんなテーマなのかとハッキリ明示してくれる。

春日部に突然巨大怪獣が現れたり、アクション仮面と一緒に怪人軍団と戦ったり。

この怪人たちが無数にいてモブシーンの描き込みは、後にもすごいシーンがある。

しんちゃんはアクション仮面に問う。

「アクション仮面、正義って何?」

「しんのすけくん、その答えは自分で出すものだ。君なら出来るさ。」


物語は、野原家に突然宙を舞う発光体が現れるところから始まる。

その光は未来からやって来た時空調整員「ミライマン」で、しんちゃんの母・みさえは3分後の世界へ連れて行かれる。

3分後の世界では、東京タワーの上空に繭のようなものが浮かび、怪獣が街を襲っていた。


ミライマンは時空の乱れが原因で怪獣が次々に出現しており、「3分後の未来へ行って3分以内に怪獣を倒さないとこの危機が現実になってしまうのだ」と語る。

しんちゃんをはじめ野原一家は、3分後の世界に行ってはミライマンの力と正義の心で怪獣と戦う、という生活を始めることになるのだった。

3分後の未来へ行って怪獣を倒し帰ってくると、カップラーメンが出来ているという風に設定をわかりやすく説明してくれる。

しんちゃんはミライマンの力でヒーローになるけれど、アクション仮面ではなくて「ウルトラマン(1966~1967)」のような姿になる。


これはオマージュで、設定を明快にもしてくれてるんだと思う。


オープニング・クレジット後、野原家の朝の日常を早送りのようにして見せるシークエンスが面白い。

みさえは起きるとしんちゃんを起こし歯を磨かせ、朝食を作り食べさせ幼稚園へ行くため着替えさせる。

そして、布団を上げているといつもの如く、しんちゃんはのんびりトイレに入ってしまい送り迎えのバスに間に合わず、みさえが自転車で送る事になる。

家に帰ってきたみさえは背負っていたしんちゃんの妹・ひまわりを下ろし、自身は朝食を食べていない事に気づくが、ぐったりと寝入ってしまう。

このシークエンスは、この日々当たり前に行われる母親の超人的ながんばりは、スーパーヒーローが地球を守るため戦うがんばりと何も変わらないのだ、と言っているんだろうな。

最後の怪獣をやっつけるのも、みさえだし。

鏡を見ておばさんに見えても、白髪が出るようになっても、それは毎日がんばっているからだ。


ひろしやみさえはミライマンと共にヒーローとなって怪獣退治の日々を送る事になる。

ヒーローになる事で現実を忘れられたり、ストレス発散できたりとヒーローであることの爽快さが中毒のようになってしまい、日常生活をおろそかにするようになる。

このヒーローの日常や、怪獣が現れるのを待ちわびたりする描写がちょっとアイロニックで面白いと思った。

ひろしはいいとして、ヒーローに変身したみさえは巨乳になって顔も変わって誰だかわからなくなる(笑)

声も変えていて、さすが声優さんはすごいなと改めて思った。


いよいよ強力な怪獣が現れ始め、ひろしとみさえはケガをするようになり、怪獣退治に尻込みする。

一方、しんちゃんは正義の心に導かれるまま一人、戦いに向かおうとするのだった。
ひろしとみさえは、そんなしんちゃんを見てひまわり、シロを連れ後を追う。


野原一家のピンチに、巨大化したアクション仮面やカンタムロボ、紙に描かれたぶりぶりざえもんが現れる。

いままで倒した怪獣たちはエネルギー体で、しんちゃんたちはその怪獣化したエネルギーを確保していたのだが、このエネルギー体たちがアクション仮面らになって助けてくれたのだった。

つまり、このエネルギー体はコントロールされていたという事か、ちょっとわかりにくいしちょっと都合がいい展開だなと感じた。

ぶりぶりざえもんは早々に怪獣に弾き飛ばされいなくなる(笑)



この後、野原一家も巨大化し最後の決戦を迎える。


東京タワーの上空に浮かぶ繭から現れた最後の怪獣は、ヒーロー「しんのすけマン」となったしんちゃんと瓜二つだった。

「この世界で最も強い存在」であるしんのすけマンに勝つため、しんちゃんをコピーした姿というワケ。

びっくりし逃げ出したしんちゃんを追うニセしんのすけマン。

ひろし達の作戦で東京タワーに激突し落下するニセしんのすけマンを、しんちゃんは助けるのだった。

「強い人は弱い人をお助けするものだけど、強い人も弱い人もなくお助けできるならした方がいいと思って・・・」

それがしんちゃんの導き出した「正義」なのだった。


気が付いたニセしんのすけマンにぐりぐり攻撃を喰らわすみさえ。

ニセしんのすけマンは「さらなる最強がいた」と逃げ去っていく(笑)



大団円に「現れた怪獣たちはわがままな連中だったのだ、だから怪獣になったのだ」とミライマンは言う。

そうか、モンスター・ペアレンツの暗喩かな(笑)




↑しんちゃんの飛び方(笑)