クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ。 | 江戸の杓子丸

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化け猫 杓子丸の大江戸見廻覚書


「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」

96分 日  2004年

監督 水島努

製作 茂木仁史 生田英隆 木村純一
原作 臼井儀人
脚本 水島努
音楽 荒川敏行 宮崎慎二
撮影 梅田俊之
出演 矢島晶子 ならはしみき 藤原啓治 こおろぎさとみ
    齋藤彩夏 村松康雄 長嶝高士 宝亀克寿 ほか



【完全ネタバレ】


映画は映画になろうとする。☆☆☆★★


〔ストーリー〕

 しんちゃんたち“かすかべ防衛隊”は映画館へ来ていた。
ところが、いつの間にかしんちゃん以外がいなくなってしまい、驚いたしんちゃんは、父・ひろし、母・みさえを呼びみんなを探し始めるのだが・・・。



劇場映画第12作目。

水島努、脚本・監督作品。
絵コンテは水島努、原恵一。


今作品は、しんちゃん達が映画の世界に入り込んでしまったり、いかにも西部劇らしい展開、酒場での乱闘シーンや決闘シーンなど「どこかで観たことがあるな」というオマージュやパロディに溢れていた。

物語は、かすかべ防衛隊のいかにもしんちゃん達らしいヘンテコな鬼ごっこから始まり、彼らがある廃れた映画館を見つけてしまうところから始まる。

オープニング・クレジットの主題歌は「オラはにんきもの」に戻っている。
やっぱりいいな、この曲(笑)

タイトルの出し方にちょっと難がある。
出だしを、無駄に急かしている印象。


しんちゃん達は、偶然見つけた無人の映画館でひとりでに上映されている映画の世界に取り込まれてしまう。

そこは西部劇の世界で、ジャスティス知事が仕切るジャスティスシティという町だった。

太陽も動かないこの町は時間が止まっていて、次第に元の世界にいた記憶も失ってしまう。

しんちゃんらはこの映画を終わらせれば春日部に帰れるのではないかと考え、悪の知事ジャスティスが立入禁止にしている場所へ向かう。


しんちゃん達が入った酒場で乱闘騒ぎが起こり、保安官が登場するといういかにも西部劇のベタな展開は子供たちに見せるためなのかな。

最近は米国映画でいかにもの西部劇はあんまりないもんね。

この乱闘シーンでも、全編においてもしんちゃんらしいギャグが効いてなかった気がする。
もっと、らしい流れがあると思うんだけどなぁ。



保安官は、実は一足先に映画の世界に入り込んでしまった風間くんだったが、すり寄るしんちゃんを殴りつける。

もうしんちゃんの事を忘れていたのだった。

この風間くんがしんちゃんを殴るショットや、ジャスティスのムチでしんちゃんやみさえが叩かれるなど、結構暴力描写がストレートだった。

だから、後半はいつもの如くおバカなアクションになるんだけど、前半はややシリアスな雰囲気。


ヒロインは「つばき」という少女なんだけど、しんちゃんは告白してしまうほど本気になってしまう。

一緒に元の世界に帰ろうと助け合って戦ったが、春日部に帰ってきたのはしんのすけだけだった。

彼女は映画の世界の女の子だったのだ。

しんちゃんは「映画の世界に帰りたい」と心を痛め落ち込んでしまう。


ここまでしんちゃんが真剣にヒロインを想う展開は、シリーズを通してあまりなかったと思うからすごく新鮮だった。


オケガワという研究者は、この町を知事から救うヒーローを待望し、ヒーロー達のために秘密道具を作っていた。

それは何故か、赤いパンツ(笑)

シンデレラが忘れたガラスの靴のように、このパンツがフィットする人物がヒーローとなるのだけど、それはかすかべ防衛隊だった。

けれど、5人の心が一つにならなければ、その力は発揮されない。


しんちゃん達は蒸気機関車で、立入禁止区域のその先へ向かう。

ここから長~いチェイスになるんだけど、突然「荒野の七人(1960)」のガンマン七人が現れ、しんちゃん達をバックアップしたりする(笑)

キャラクターの名前もそのまんまみたい。

拳銃の音が、西部劇の映画からもらってきたんじゃないかなぁという少し古めかしい音で、洒落っ気があっていい。


ジャスティス知事らは自動車で機関車を追いかけるが、途中風間くんが危機に陥る。

しんちゃんは命を懸けて風間くんをお助けするが、すると自然とかすかべ防衛隊は一つになり正義のヒーロー「カスカベボーイズ」に変身するのだった。

きれいな夕日をバックに5人が手を重ねるシーンは、やっぱりいいね。


ガトリング銃で撃たれようがへっちゃらになった5人は、「かすかべ防衛隊、ファイアー!」の掛け声も忘れてしまっていたが、やがて思い出しさらに進化し、空も飛んでしまう。

ジャスティス知事はカウボーイ型巨大ロボットに乗り込み、しんちゃん達を潰そうとする。

しんちゃん達はスーパーマンのようになり、巨大ロボットも登場と、もうしっちゃかめっちゃか(笑)


また、このチェイスと戦いが長い(笑)

巨大ロボットの手が「つばき」を捕らえるショットは、「大魔神(1966)」を連想させるけど、その手に捕らえられた「つばき」をしんちゃん達が助け、また捕らえられと何度も何度もやるんだよね(笑)

残念ながら、ずっと同じ事をやってるような戦いだった。


いよいよ、禁止区域へ辿り着いた一行。

そこには、何かを封印した巨大な鉄の扉が3つあった。

「何だろうな」と観ながらずっと考えていたんだけど、なるほどちょっとおバカながらも、なるほどのオチ。

映画らしい、面白いオチだった。


しんちゃん達が忍び込む閉館となった映画館「カスカベ座」にあるフィルム映写機が出す光やカタカタという音。

ヒロインを好きになったしんちゃんの「映画の世界に戻りたい」というセリフ。

映画そのものへの愛も感じる今作品。


また、野原一家と共に行動するマイクは水野晴郎だったり、「荒野の七人」はそのまんまのルックスと実在の人物をモデルにしたキャラクターが多数登場する。

悪の知事ジャスティスを演じるのは、アニメ「ルパン三世(1971~)」シリーズの次元大介役・小林清志さん!