クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦。 | 江戸の杓子丸

江戸の杓子丸

化け猫 杓子丸の大江戸見廻覚書


「クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦」

99分 日  1998年

監督 原恵一

製作 茂木仁史 太田賢司 堀内孝
原作 臼井儀人
脚本 原恵一
音楽 荒川敏行 宮崎慎二
撮影 梅田俊之
出演 矢島晶子 ならはしみき 藤原啓治 こおろぎさとみ
    三石琴乃 玄田哲章 塩沢兼人 山寺宏一 ほか



【完全ネタバレ】



お下品な正義のブタ野郎。☆☆☆★★


〔ストーリー〕
 世界征服を目論む謎の男・マウス率いる秘密結社「ブタのヒヅメ」。
彼らが新兵器を開発したと知った国際情報組織SMLの女性エージェント「お色気」は、敵の空中要塞から兵器の一部パーツを奪取。

 彼女は東京湾を進む屋形船へ逃れるが、その船内にいるしんのすけたちと出会うことになる・・・。




劇場版第6作目。
原恵一、絵コンテ、脚本、監督作品。


冒頭、国連の秘密組織「SML」のエージェント・コードネーム「お色気」は、悪の秘密結社「ブタのヒヅメ」の飛行船に潜入し秘密兵器に必要なディスクを盗み出し東京湾へと脱出する。

このシークエンスは、「お色気」のボディスーツ同様タイトで、押井守監督作品を連想させた。

パロディなのかも知れないな。
「ブルース・ブラザーズ(1980)」のパロディもあったから。

シリーズを通してホントにアクションシーンのクオリティがすごいと思うんだけど、何故(笑)


そしていつもの如くタイトル、クレイアニメのオープニングクレジットと流れるんだけど、歌がすごい(笑)

「とべとべおねいさん」という歌だそうで、しんちゃん(矢島晶子)が好き放題はずし放題で歌う、いかにもしんちゃんらしい曲なんだけど、脱力してしまう。

冒頭から力が抜けちゃうじゃんか(笑)


しんちゃんが風間くん、ねねちゃん、マサオくん、そしてボーちゃんらと「かすかべ防衛隊」として行動する展開のお話しは、この後のシリーズ作品で多くなるけど好きだなぁ。

その分、ひまわりの出番がなかったけどしょうがない。



物語そのものに集中しているというか、この作品のゲストキャラクターがメインとして動き、しんちゃんらは連行されたりついて行く展開なので、どうも満足感がない。

前作はすごいバランスだったけど、今回はどうもしんちゃんらのギャグも強引で、盛り上がらなかったなぁ。

しょうがないんだろうけど、中盤からずっと戦っている印象でおバカな展開で決着がつくのはいつもの事ながら少々どうでもよくなっちゃう。

悪の秘密結社「ブタのヒヅメ」には3人の幹部がいてそれぞれと戦うんだけど、ちょっと冗長に感じてしまった。


クライマックス、コンピュターウイルスである「ぶりぶりざえもん」としんちゃんがコンピューターの中で問答するんだけど、そのエピソード「ぶりぶりざえもんのぼうけん」はさすが見事、いいシークエンスで光っていた。

しんちゃんが生み出したヒーロー「ぶりぶりざえもん」のアイディアをもらい、大袋博士はコンピューターウイルスを作り出す。


しかし、正義の心を持たない「ぶりぶりざえもん」に、しんちゃんは嘆き、真の姿を教え諭すのだった。


「ぶりぶりざえもん」はお宝が眠っている「お宝ちょーだい山」の山頂を目指すが、道中レースクイーンやOL(笑)に助けを乞われる。

いやいやながら助けるうちに山頂に辿り着くが、金銀財宝のお宝はない。

それでも、「ぶりぶりざえもん」の脳裏に浮かぶのは、彼に助けられ感謝するレースクイーンたちの笑顔だった。

正義のヒーローとしての「ぶりぶりざえもん」はお宝をもう手に入れていたのだ。


自身の真の姿を知った「ぶりぶりざえもん」は、夕日を背景にデリートされていく。

おバカでおスケベでむちゃくちゃなしんちゃんが、ことアクション仮面や正義のこととなると大真面目に、純粋になる。

TV版も含めてそういう、少年の正義への揺るぎない真っすぐさをさりげないながらもしっかりと描いていて、観ていてホントに心地いい。


しんちゃんによって、「ぶりぶりざえもん」という秘密兵器を失った悪の組織「ブタのヒヅメ」のリーダー・マウスは本部基地を爆破する。

見せ場なんだけど、そのシーンの作画が迫力がなくてちょっと残念だったなぁ。



大団円を迎え、ふと青空を見上げる野原家と「お色気」らのショットが原恵一監督らしいと思った。


ゲストのIZAMが本人役で、また原作者の臼井儀人も登場。
今回はみさえに殴り飛ばされる(笑)

オカマキャラも登場するし、悪の結社「ブタのヒヅメ」の幹部・バレル役は山寺宏一、SMLのエージェント「お色気」は「新世紀エヴァンゲリオン(1995~1996)」で葛城ミサトを演じた三石琴乃。

いつもはアクション仮面役の玄田哲章が、SMLエージェント「筋肉」役で出演していて嬉しい。


声優陣も豪華だし、アクションシーンも飛行機の空中戦や、銃撃戦や肉弾戦と多彩。

それでも、何故か入り込めなかった。
なんだろうな。

やっぱり、しんちゃんが前半は捕らわれの身で傍観者となってしまい、後半はかすかべ防衛隊としてもこれといって活躍がないところかな・・・。

実際しんちゃん達がいなくても物語は展開できてしまう。
「ぶりぶりざえもん」と対峙するクライマックスまで、しんちゃんが爆発しない。

単純にシリアスな銃撃戦がある物語が「しんちゃん」の世界に合わないのかな。
僕が勝手にそう思うだけか。

でも、しんちゃんが常に浮いていたんだよね。



↑素晴らしい背景画のショット。

宮崎駿監督曰く、「アニメの品格は、美術で決まる」のだそうだ。