ファンタズム。 | 江戸の杓子丸

江戸の杓子丸

化け猫 杓子丸の大江戸見廻覚書


「ファンタズム Phantasm」

89分 米  1979年

監督 ドン・コスカレリ

製作 ドン・コスカレリ
脚本 ドン・コスカレリ
音楽 フレッド・マイロー マルコム・シーグレイヴ
撮影 ドン・コスカレリ
出演 A・マイケル・ボールドウィン ビル・ソーンベリー
    レジー・バニスター キャシー・レスター ほか



【完全ネタバレ】


疑心銀玉を生ず。★★★☆☆


〔ストーリー〕
 13歳のナイーブで孤独な少年マイクは、兄ジョディの友人の葬儀で奇妙なものを目撃する。異常に背の高い謎の男トールマン(Tall Man)が棺を車に放り込んでどこかへ去って行ったのだ。

 その日からマイクは悪夢のような出来事に次々と襲われていく。 



ドン・コスカレリ監督は製作、脚本、撮影や編集と5役をこなしている。

なかなか借りる事ができなくて「名作なのか?」と期待を膨らませ、観て勝手にがっかりするパターンだったかな(笑)



でも、つまらないと斬って捨てる事ができない何かが確かにある。
1979年か、この独特の雰囲気に当時ハマってしまった人がいるのもわかるな。
いわゆるカルト・ホラー。

1979年としても、ちょっと演出や編集が粗雑に思う。
わざとやっているにしてもどうかな・・・(笑)

ただ独特の映像世界は確かに印象に残る。

霊廟にある一室が異世界へと通じる門となっているんだけど、そのイメージは鋭く今でも十二分に魅力的。



ストーリーは、宇宙人と思われる、異常に背の高い不気味な男トールマンは霊園を拠点とし、奴隷として使うため人間の死体を盗んで自分の惑星に送り込んでいた。

そして、トールマンは女性に化け男たちを殺しその遺体も奴隷として利用していたのだった。

主人公の少年マイクは、霊園で起こる奇妙な出来事はトールマンの仕業であるといち早く察知し、兄ジョディと共に戦うことになる。

ストーリーはあってないような物というか、そもそも監督が見た夢をベースに作り上げたのだそうだ。
だから、その異様な画や雰囲気を好きになる人が多いのかな。

デイヴィッド・リンチ監督作品のようなヘンテコで不思議な魅力のある映画。



観始めて30分経ってもこれといって何もなく平坦で凡庸で苦痛になり始めた。
でも我慢して観ていると、突然始まる(笑)

冒頭30分は、子供が抱く恐怖や疑心暗鬼を表現し、それはまた主人公マイクの妄想(ファンタズム)の隠喩でもある。

両親を失った少年マイクは兄ジョディまで失うのではないかと恐れている。

性の目覚め、墓場、幽霊や化け物、近しい者の死、孤独。

兄の親友が亡くなった事で、マイクの恐怖が悪夢となって襲いかかる。

最終的に夢オチみたいになって物語をひっくり返してみせるんだけど、この最初の30分がそれを支えているんだと感じた。



確かに、子供の頃はどうって事ないものが怖いんだよね。

この銀の玉は監督にとって何の恐怖の象徴なんだろ。



本作はシリーズ化され、4作目まであるそうだけどどうしようか・・・。
あんまり観たいと思わんなぁ(笑)



このトールマンというアメリカの都市伝説って一体なんなんだろう。
背が高いにしてもビジュアルはただの人じゃん(笑)

モンスターや妖怪って感じでもないし。神隠しや人さらいといった恐怖かな。